薄情
「ふとして、太陽を思い出そうとしても、夜の月明かりの前じゃ、何も思い浮かばない」
君が云って、わたしに背を向ける。
「わたしって、わたし達って薄情だね」
振り返って云う。
なぜわたしまで、とは思ったが、
刹那、考えれば、たしかに、太陽の虚像を、
思い浮かべることのできない自分がいる。
「たしかに、薄情、だね」
わたしは、云って、
もう、めっぽう、めっきり見えなくなってしまった、
空の下、途切れた空の下に、移動した、
太陽を、見遣るように、地平線を撫でた。
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