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石柱

 何かの拍子に、手から石柱がでた。

 恐ろしいことに、まだで続けている。

 発生からはや一時間だが、そろそろ東京タワーを越えそうだ。

 周囲は封鎖され、自衛隊がわたしに静止を呼びかけている。

 無駄だ。わたしだって止め方なんて知らない。

 ただ、伸びていくんだからしょうがない。

 発生から二十四時間。

 もはや立っていることも辛くなってきた。

 眠気と空腹で、体は限界である。

 高度は415,000メートルを越えている。指先に宇宙を感じるような気がする。

 ああ、もう、無理。

 ISSはかろうじて軌道を修正して、巻き込まれずに済んだ。

 気象衛星がいくらかやられたみたいだ。

 石柱は、富士山頂のカルデラを大きく凹ませたらしい。

 接地の衝撃で折れた半分は、名古屋を横断し、大阪城の天守閣を破壊した。

 わたしは大災害を発生させた張本人として、有罪判決を受けた。

 何かの拍子にでただけの石柱で、

 わたしは日本に未曾有の大災害をもたらしたのだった。

Kise Iruka text 095. 
Stone Pillar.

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