混浴
「あめがひどい」
君が、水の滴る服をしぼる。
わたしは、君から受け取った傘をかわかしている。
最近住み始めたアパートの玄関で、ふたりでぬれねずみだ。
扉の向こう側の豪雨は、音だけになっても、そこに確かに厳存する。
「あなたがどうしてもというのなら……」
君が服を脱ぎながら云う。
てらてらと濡れた地肌があらわになって、艶めく。
「あたためあうのもいいと思うんだけれど」
君があくまで憮然と云いはなつ。
わたしは君の胸奥を透かし見ることができるので、
君が求めている応えかたをして、
湯あみにご一緒するために水浸しの服を脱ぎ捨てる。
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