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月面

 夜空、莫大な月を見上げる。

 月の都市の夜の明かりが、はっきりと線状に刻まれているのが、よく見える。

 人間が月に築いた都市の質量が、あまりにも大きかったために、

 こうやって、どんどん、地球に近づいてきてしまっている、

 と、まことしやかに、街談巷説が繰り広げられている。

 夕闇の向こう岸に見える、人々の営み。

 たぶん、向こう側からも、おんなじように見えているんだろう。

 わたしが生きているうちに、衝突するだろうか。

 わたしが生きているうちに、脱出する術は、開発されるだろうか。

 夜空、目前まで迫る月面を眺めて、

 わたしは、一人、闇の中で物思いにふける。

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