花火
火花が、暗暗とした夜の闇に、
燦やかに散ってゆく。
落ち着きがあり、かつ、どこまでも力強い、
線香花火の閃光が、
君の顔を、明るく、弱々と照らし出している。
「服に匂いがつく前に、しまいにしよう」
そう云って、君が、後片付けを始めてしまう。
わたしは、もう少しだけ、と、最後に線香花火をもう一本取り出して、
火をつけた。
そうしたら、君も、片付け始めた袋の中から、
一本取り出して、いそいそと火をつける。
「わたしも……」
そう云って、横に並んで、かがむ。
徐々に肥大していく火球は、ついに事切れる。
わたしの方が早かった。
「……先に始めたから」
なんて言い訳をして、君をみる。
君は、まだ、顔を赤らめたまま、
火球を育てている。
じきに、君の火球も落ちるだろうが、
今は、この儚い時が、悠久に感じられる。
ような気がする。
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