映り込み
「君の目の色、わたしだ」
やたらと肉薄してきたと思ったら、唐突にそんなことを云うので、面食らってしまった。
「そんな顔もいいね」
なんて、追い討ちの様に囁きかけてくるので、ふいと目をそらして、両腕でぐいと遠ざける。
「そんなことしたって、ふたりの距離は変わらないでしょう?」
余裕をたたえたままの君の顔が、なんだか癪に触るので、
ずいと、目を見開いて、君の目を覗き込む。
ああ、なるほど、
瞳のうるうるとした鏡の中には、確かに、
自分だけがはっきりと映っている。
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