落下
傘を穿つように、激しく振り付ける雨が、胸に響く。
道の縁に生える紫陽花も、雨にあてられて、幾度も首を上下させている。
眼下の水面にわたしの全身が映る。
真下からの姿見も悪くない。
自分が、梅雨の曇天に落下するように感じる。
傘をクッションにすれば、安全に雲の上に降りたてるだろうか。
もしうまくいけば、雲の上で、残りわずかの梅雨の間を過ごそうか。
そうしたら、梅雨の節が終わる頃、雲が霧散すると同時に、
わたしは快晴の空に生まれる。
愛しい夏に生まれる。
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