きりさめ
秋の降雨は、渇いているから冷たい。
吹きつけられる水滴の重たさに耐えられずに、
古びた葉が、離れて、舞い落ちている。
電柱には、迷い猫の張り紙が掲げられているが、
じっとりと水分を含んでしまって、インクが滲んでいる。
ああ、わたしの猫、どこへ行ってしまったのか。
この間の霧雨の日は、わたしの膝の上にいた。
寒々しい世界を拒絶するように、暖をとって眠っていた。
冷たい雨を浴びて、じっとりしながら彼を探す。
彼も、ふわふわの毛にたっぷりと霧雨を溜めて彷徨っているのか。
せめて、どこかで雨宿りをしていてほしいな。
ぴゅうと、射すような風が肌を切る、こんな雨の日は、体に悪い。
早く帰ってきておくれ。
霧雨は君には寒すぎる。
Kise Iruka text 094;
KIRISAME.
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