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【連載小説】パラダイス・シフト

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記事一覧

【連載小説】パラダイス・シフト_8

「それは本当なのか?」  おれが聞くと、工藤の震えは止まった。よほど強く押さえていたのだ…

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【連載小説】パラダイス・シフト_7

 例によって例のごとくサービス残業を1時間半ほどこなして会社を出たおれは、しかし、いつも…

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【連載小説】パラダイス・シフト_6

「おい、工藤!」 「ああ、カジカジ。おかえり。ずいぶん早かっ――」  振り返り手を挙げよう…

【連載小説】パラダイスシフト_5

 あんたは人が死ぬ瞬間を見たことがあるか?  おれはない。そんなものは見たくもないし、死…

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【連載小説】パラダイス・シフト_4

 4 「ゲームをしようか」  ボーイがうやうやしく持ってきたバーボンをあおり、工藤が言っ…

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【連載小説】パラダイス・シフト_3

 3  引き返す最後のチャンス、という権藤部長の言葉が頭によぎった。  おれは西新宿の片…

【連載小説】パラダイス・シフト_2

 2 「あれは役立たずだった」  そう言って、権藤部長は大きな息を吐き出した。真っ白い煙がもわっと広がり、視界が悪くなる。  それがあまり意味をなさないとわかっているが、数秒息を止める。「……あの子ですか」  一週間前に、たったの二週間でやめた新入社員のことだ。ゴールデンウィークまで持たなかったのは史上最短記録だったらしく、同期にも上司にも、おおいに同情された。  というのも、おれが指導役だったからだ。  三年前におれを指導してくれたのが、権藤部長。そういう関係だ。 「カジ