ワレハ、ウチュウジンダ!

幼少期の私へ

まずは謝罪から。

ごめんね、私、ナウシカにはなれなかった。

そして報告を。

私、どうやらトトロになってるらしいよ。


小さいころの夢はナウシカだった。

弟と一緒に怪獣ごっこをして遊んでいたこともあって、やたら好戦的だった幼少期。隙あらば父親の金的にグーパンを食らわせ、はっはっは!と、ウルトラマンのごとく高々と笑う。当時は、戦うことが世界を守る唯一の手段だと思っていた。

だけどあるとき、『風の谷のナウシカ』を見て私の世界は180度旋回することになる。

ナウシカは、戦わずして強い人だった。

テトに噛まれても動じない強さ。王蟲の群れを前に臆することなく立つ覚悟。銃口を向けている人に対して、丸腰で挑む度胸。谷の人々への気遣いと思いやり。姫でありながらたったひとりで腐海を旅する自由と冒険心。新しい戦士の姿が、幼い私の琴線に触れまくった。

その後、もののみごとにナウシカにはまった私。今思えば私のオタク気質はこのころからだったのではないかと思う。怪獣ごっこに代わってナウシカごっこが遊びの主流になり、「怖くない。怖くない。」が家族で大流行した。

この調子でいけば、将来はキツネリスをお供に、メーヴェに乗れる!ナウシカになれる! と本気で思っていたのだ。

しかし、それからおよそ15年。

私に下された判決は、トトロだった。

友人は言った。

「トトロっぽいよね。なんか、人間味がない」

人間味が……ない?

とある占い師は言った。

「あなたは頭で考えていることと、心で感じていることと、口に出すことが全部違う。これ……宇宙人入ってるね。」

宇宙人……?

一瞬脳内が真っ白になったが、後に何となく理解した。私がトトロと言われる所以も、私をナウシカからトトロや宇宙人に変身させた魔法も。

魔法使いは、「社会性」という名の魔法を使って、私の弱さを恰好の餌食に、私をナウシカから小さなトトロへと変身させた。

小学校中学年頃から自然とできるグループとそれと同時に生まれる仲間外れにされたらどうしようという不安。不安を解消するには擬態するしかないじゃないか。周りと一緒の文房具を使って、交換日記を何人ものトモダチとやった。ごっこ遊びが大好きだった私は無意識的にナウシカごっこから、「小学生の女の子」ごっこに転向していた。たぶん、私の中に「世界くん」が生まれたのはこのころだったのだと思う。(自筆『トラビスのすゝめ』参照)

そのごっこ遊びが高校まで続いてきた。「部活に熱中している学生」ごっこ。「真面目な学生」ごっこ。「先生に好かれる学生」ごっこ。そのうちにどれが本当の私で、どれが擬態した私なのか分からなくなった。結果、なんか違うな、という漠然とした違和感との同棲にも慣れた。

頭で考えていること、心で感じていること、口に出すこと。

擬態した私、本当の私、「世界くん」。

こうして世にも珍しい、地球人のお腹から生まれた宇宙人兼トトロが誕生した。

だけど、魔法使いは私に逃げ道を残した。

推しに浸るときだけ、宇宙人が人間にもどる魔法。そうして私は趣味の時間だけは、人間になることが許された。

漫画を読んで、推しに会いに行く時間。アニメを見て推しの声を聴く時間。音楽を聴いて、推しの才能に圧倒される時間。本を読んで、新しい知識を得る時間。得た情報から妄想する時間。妄想を吐き出す時間。その時間だけは、全部本当。全部、私。

私が、「好き」を仕事にすることに人一倍惹かれている理由はここにある気がする。

「人の目は気にしないで。もっと欲張っていきなさい。」

宇宙人に人間様から、ありがたいアドバイスをもらった。

きっと私は永遠に宇宙人のままなのだと思う。だけど、宇宙人だってメーヴェにのって自由に旅したいんだ。トトロだって肩にキツネリスを乗せたいんだ。

頑張れ宇宙人。頑張れトトロ。

周囲の目に負けそうになったら、とっておきのおまじないを唱えよう。

「怖くない。怖くない。」ってね。


















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