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新体制の果てに...

この4月から新体制となった。

と言っても、
組織の中で配員を変えてるだけなので、
実質、何も変わらない。

バーチャルであった製品別の縦割り組織(チーム)が、
業務内容毎の横割り組織(グループ)に変わっただけ。

バーチャルなグループとして。

よくある話しだ。
みんな、そう思ってる。


組織変更の意義を強調するかの様に、新年度の前日に席替えが行われた。

(この3年で、何回目の席替えだっけ…? 誰の為の組織変更なんだろう?)


今朝、課長から、ようやく組織改変の説明があった。
仕組みの変更に関する端的な説明。
思いや、“目指すべきところ”への話しはなかった。

その時間 15分…

トナリのオヤジさんがボソッと呟く。
「結局、今回は何がしたいんだ...?」

「まぁ、新しく業務も取り込むみたいだし、それに対応できる組織ってコトじゃないですかね?」

「バカやろう、人数、増やさずにか?」

「でしょう…ね。増員の話しはなかったですから…」


バーチャルな組織とは便利なモノで、
トップがそうしたいと思えば、勝手に変えられる。

まぁまぁ、それはイイかもしれない。
この変化の激しい時代、スピーディに動くことは大事だ。


そして…1ヶ月が経ち・・・


組織は変わったけど、バーチャルだからか、
やっている業務は、今のところ変わらない。

(おかしいな。担当の区分が曖昧になってきたと言うか、ヘンな重なりが増えてきたというか…)

(業務を取り込んだ分、もっと重なりを小さくしないと、いつか破綻するゾ、これは。)


それにしても…


バーチャルな組織の“長”はバーチャルな上司になんだろうなぁ。
(責任感はあるが、ビジョンは...?)

そのバーチャルな上長が作った目標数値もバーチャル?
(非現実的を通り越して、誰も達成できると思ってない?)

そして、
報告する実績もバーチャル...?
(盛り?実績とかけ離れてる…)

もしかすると…

ボクの担当業務もバーチャル…なのか?
(無限の広がり…)


いや、そもそも、会社としてのボクの存在、が…





なんか、おかしな事、考えてしまう…

いかん、いかん…


毎月定例で実施しているミーティング。
ボクの中で、何かが弾ける。

よく分からないけど、そんな感じ。


そもそも、ずっとこの会社にいる、と思ってたのが間違いじゃないのか?


「あのぉ…」
普段は何言わないけど…

ロジカルでもなく、心にも響かない。
そんなんで、いいわけない。


「誰も、何も言わないと…このまま、1年間が経ちそうなんで…」

「?」

「そもそも、何を目指せばいいんですか?」

「?」

「…いや…、なんと言うか、今回のこの…新しい組織で…」

「だよね…ソコだよね…」

「へっ?」

「いゃ…まだ、完全にはまとまってないから、さ。近いうちに、皆さんに説明できる様にします」

「はぁ…(なんだ、そりゃ…)」


さらに、それから、1ヶ月…

結局、何の説明もない。


そして、
バーチャルでも、何でもない、この雰囲気に耐えられなくなったある日…
ふと思った。


(そっか。会社での存在がバーチャルなら、好きに、思いっきりやればいいだけじゃないか?所詮、バーチャルでしょ)


と、色んな意味で一歩を踏み出した時、
ソレは突然やって来た。



「ちょっと、今日、いいかな。
 悪いけど、定時後しか時間が取れないんだけど。ほら、今、色々、トラブル対応があるから」

「はぁ…(そのトラブルの種まきは、アンタがしてるって、ミンナが言ってるの、分かってるのかな?)」


定時後、指定された会議室に行くと…
課長の他に、お偉いさんが3人もいた。

まぁ、会議室がガラガラの時間帯に、わざわざ離れたトコの会議室だから、何かあるとは思ったけど…


(何か悪いこと、したっけ?)

とりあえず、思い当たるコトはない(笑)
グループの人達がやっている課長の“愚痴”合戦にも参加してないし…


少し重苦しい空気を破ったのは、課長ではなかった。

「まぁ、オレが言うのもなんだけど。
 あのなぁ、足立クン、どぅしても、君が欲しいって部署があって…
 10月からなんだけど、な」

「はぁ。(いゃいゃ、10月って、まだ4ヶ月も先だぞ!)」

「先方の課長からは、ずっと言われてたんだけど、
 これまで断ってたんだよね」

「なるほど…(いや…だったら、今回も断ればいいでしょ…)」

「向こうは、企画・営業的な提案から、最後の完成まで担当する様な、大変、やりがいのある仕事だ!との事だ」

「はぃ…」

「先方の白石課長、君みたいな全体を見れる人物を熱望しててね」

「白石さん…存じ上げないですね。自分と接点、ありましたでしょうか?」

「元々は、大阪で立ち上げた部署を、関東に展開してる所だから…接点はないだろうね」

「知らない人が、知らない人を、熱烈スカウト…」

「…」

(本当に、ボクは…存在しているんだろうか…)
(それとも、ここんトコ、色々とやり過ぎた…のかな?)


「今年度、新しい仕事が増えてますよね?
 9月からも例の新プロセス、始まりますし。減員して大丈夫ですか?」

「おぉ、
 課長からは、効率的にできる様になるから問題ないって聞いてるぞ」

「販路をアジアにも広げろ!って、中国にも出張したばかりなんですけど…(いやぁ…コレだけは、自分の手でなんとかしたかったのに。唯一のリアルな業務)」

「そうだな。君のお陰で、もう決まった様な感じらしいじゃないか!
 まぁ、その功績もあったんじゃないかな、今回の件は」

「そうですか…(いゃいゃいゃ。アソコのお客さん、そんなすぐには首を縦に振らないヨ!ずっと、そう、説明してんじゃん!」

「あとは、課長、よろしく」

「はぃっ!」


だけど、
説明があったのは先方の会社のパンフレットだった。


そして…
「行け!」とも言われなかったし、
「行く気はあるか?」とも聞かれず…

空虚な会議ば終わった…

(ソコって、ボクが聞くべきトコなのだろうか?)


あれから、さらに1ヶ月…
相変わらず、課長からはなんの説明もない。


バーチャルなグループ長は、何か聞いてるのだろうか?
いつもせわしなくしているので、聞いていいタイミングが分からない…し、
やっぱり、コレは、ボクが口火を切るコトじゃない!とも思う。


何も知らないであろう、隣りのオッちゃんが呟く。

「アッチの営業さん、全然、話しになんねぇぞ。足立っちゃん、中国で、チャンと白酒、飲んできたの?、!」

の、飲みましたって。もう、これ以上飲めないぐらい!
「もう、コレで、最後ですよ!」って一気で開けたら
奥からもう一本出て来て…

ホントに、
次の日も身体から白酒の匂いを発するぐらい飲みましたよ!

あぁ…
思えば、アレが、リアルな仕事…だったかもなぁ…
最近、唯一の…


さて…
引き継ぎ、どうしようか…?


いや…
そもそも、異動の話しが”仮”だったのか...



最後までお読みいただき、ありがとうございました。 これからも、よろしくお願いしますっ!