保護犬っていう選択肢はある?
そもそも恥ずかしながら、僕は、保護犬に関して、
あまり知識を持ち合わせていなかった。
週末になれば、家の近くのペットショップに出向き、
ガラスの部屋に入れられた子犬を見て、
「可愛いねぇ…」とニヤニヤしているだけだった。
そんな頃、会社の自席でランチを頬張っていた時のことだ。
「犬、飼いたいんだよね」という話を切り出したら、
当時の同僚が、バリバリとシリアルを頬張りながら、
「ねぇねぇ、保護犬はどう?」と訊いてきた。
「保護犬ー?」と訊くと、彼女はコーヒーをゴクリと飲んで、
「そう、保護犬ー」と言って、パソコン画面を見せた。
『ペットのおうち』というインターネットサイトで、
そこには、可愛らしい犬や猫の写真が並んでいた。
僕の保護犬のイメージは、もっと“可哀そうな子たち”だった。
当時住んでいた麻布十番の広場では、時折、
保護犬・保護猫の譲渡会が開かれていた。
ちょろっと覗き込むと、怪我をした犬、毛が抜けた猫がいて、
そこには「こういう経験をした子たちです」という紹介文もあった。
僕はそれまで犬を飼ったことがなかったから、
自分勝手な言い訳なのだけど、どこかで偏見や思い込みがあって、
「可愛そうな経験をした子たちを受け止めきれるか」と、
ちょっと恐怖に感じていた。
当時、仕事でダイバーシティを取り扱っていながらに、
「障害がある犬を受け止められるか」
「トラウマを抱えた犬と一緒に住めるか」
という不安を抱いていたのは事実だ。
同僚は、また何か身体によさそうなものを頬張りながら続けた。
「保護犬って言っても、色々な子がいるからね」
そこから、『ペットのおうち』を覗く日々が始まった。
色んな子の写真を見ながら、色んな経緯が紹介された文を見ながら、
「フィラリアって、どんな病気だろう?」とか、
「予防接種・ワクチンって何だ?」とか、
少しずつ、保護犬と住む日のことを夢見始めていた。
『ペットのおうち』を見始めて、いよいよトメと出会うようになるまで、
多分、2年くらいが経っていた。
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