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2023年に読んだ本たちとTOP3

2022年にも、その年読んだ本を紹介し、もう1年が回ってきた。昨年は大学院生活に追われ、15冊ほどしか読めず「2023年は月に2冊は読もう」と決めた。

もちろん、冊数にこだわる必要はないけれど、この調子でいくと10年かけても150冊しか読めないことに気づき、ちょっとショックだった。

150冊分の知識や思想が蓄積した自分と、240冊分の自分。

できる限り深く豊かな感性をもった自分になりたいと思う私は、やっぱり沢山の本を読みたい。

結果、今年は25冊読んだ。欲を言えばもっと読みたかったけれど、大学院の課題や修論、就活を行うなかで月2冊を達成できたのは悪くないはず。

さて、今年のTOP3は…

ジョージ・オーウェル『1984』
H.D. ソロー『森の生活: ウォールデン』
ヤマザキマリ『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』

今年、特に後半に読んだ本がどれも面白く、選ぶのに苦戦したけれど、この3冊にした。

ジョージ・オーウェル『1984』

なかでも『1984』は印象深かった。長い間、読もう読もうと思いつつ、なかなか手が伸びなかった本だったものの、これは読んでよかった。あらすじや深い考察は、他の方々に譲るとして。

国家・権力・メディア・思想…。個人がそういった大きなものに抗おうとしても次第に飲まれていく様―。一見すると、1949年の刊行当時に作者が空想した、架空の国家を描くファンタジーのようでいて、よくよく考えると、今の社会がそれに近づいているようにも思える。

個人的に角川文庫の表紙(上のリンク)も、物語の世界観と合っていてとても好き。ベルギーの画家ルネ・マグリットによる〈人の子〉という作品らしい。そういえば、イギリス留学中にベルギーを訪れ、マグリット美術館に行こうか迷ったことを思い出した。時間がなく断念したけれど、いつか行きたい。


H.D. ソロー『森の生活: ウォールデン』

つぎは、ソロー『森の生活』。正確には、まだ上巻しか読み切っていないけれど、これもとても気に入った。著者であるソローはアメリカのとある湖畔で2年2か月の自給自足を行い、この本はその生活の記録と思考とを綴っている。

生活するとはどういうことか、生きていくうえで本当に大切なものとは何か。

私はここしばらく、大学院を終え、どこにも所属せず毎日を静かに暮らしていることに満足する一方で、これで良いのだろうかと悶々としていた。ソローはこの煮え切らない思いを少しほぐしてくれた。

19世紀中ごろのアメリカで発行されたこの本が、時代も国も越えて読まれ続けているのには、やっぱり理由があると感じる。ソローが自給自足を送るなかで、接近しようとした「生活」の真理や本質は全く古びていない。

ただ、西洋的な自然観やローマ神話、古代の文学を下敷きにした比喩が出てくるため、日本人の私はきっとソローが言いたいことを十分に理解できていないだろうなと少し惜しい。


ヤマザキマリ『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』

最後に、『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』。

この本は、紹介文に「自由に生きれば欠乏し、安定すれば窮屈だ。どうしようもなく希望や理想を持っては、様々な”壁”に阻まれる――。」とあるように、安部公房が作品のなかで描いた「壁」と、ヤマザキマリさん自身がこれまで直面してきた「壁」とがテーマになっている。

ヤマザキマリさんによる安部公房の作品論ともいえ、『砂の女』を一応読んでみたものの、何を伝えたかったかよく分からなかった、というような人におすすめかもしれない。

ただ私にとっては、作品論以上に、精神的支えとなるような作家や作品を見つけ、ともに人生を送る素晴らしさを教えてくれた本になった。

にっちもさっちもいかない、誰かに相談したいけれど、自分でも自分の感情や欲求を十分に把握できない ―。そんなときに、適確な表現で繊細に言語化してくれる作家や作品がいたら、とても心強いと思う。

✥ ✥ ✥

上の3冊以外にも、素晴らしい本はたくさんあった。

東山彰良『流』
稲垣えみ子『寂しい生活』
向田邦子『眠る盃』
池波正太郎『夜の戦士(上)』
ミヒャエル・エンデ『モモ』
藤津亮太『アニメと戦争』
水野学『センスは知識からはじまる』
水野学・山口周『世界観をつくる』
山口周『仕事選びのアートとサイエンス』
桒原響子『なぜ日本の「正しさ」は世界に伝わらないのか』
ヘミングウェイ『老人と海』
ヤマザキマリ『国境のない生き方』
外山滋比古『思考の整理学』
ゲーテ『若きウェルテルの悩み』           などなど…

ずいぶんランダムにも見えるけれど、それぞれの本を読んだ時期を振り返ってみると、やっぱりその時の自分の関心事とリンクしている。
就活の時期、「考える」ことを考えたかった時期、物語に没頭したかった時期…。

来年はどういうリストができあがるのか楽しみ、と言いたいところだけれど。来春から働きはじめて、そもそも読書する余裕があるのか…。


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