#フィクション - 死から3ヶ月、四十九日も終えて、百か日法要が近づく中、本人はあっちの世界で。

鈴木晴雄、2023年1月7日（土）明朝、午前3時36分に死去。亡くなって法要が行われ、四十九日。仏教の教えでは、その魂がどこに行き着くかを決める日も過ぎた今、きっと彼は往年の仲間とあっちの世界で楽しんでいるだろう。

フィクションには興味がない。書くことも読むこともない。漫画、アニメ、演劇、などフィクションの世界に没入できない性格〜傾向にある僕だけれど、父がどう迎え入れられ、どう飲んでいるかを想像することにした。

僕も日本酒をいただきながら。ごく私的な妄想のアーカイブ。

晴雄　そういうわけで、これからお世話になります。
順一郎　おまえさん、もうこっちにきちゃったのかい。早いよ。朋子たちはどうするんだい。
晴雄　あいつらには、負担をかけちゃって本当に申し訳ない。
土屋　ハルオさんともう会えるとは。こうなったら飲もうよ。握るよ、何でも。
晴雄　じゃ、まずつまみをもらおうかな。そういえば、お前が昔出していたようなフランス料理あったろ。ああいう店に、いま、コウタはずっと通ってるよ。
順一郎　フランス料理、食べたいね。
晴雄　親父が死んだ後のコウタのグルメ化はすごいよ。いろいろな店に行ってるし、太っちゃったし。アピシウスも行ってた。
順一郎　アピシウス、行きたいねー。
敏子　なつかしいわね、アピシウス。あそこの高橋さんの料理ね。はるちゃん、もうこっちに来ちゃうなんて。少し朋子が心配だわ。
順一郎　コウタと将太には、おまえさんもオレも「お母さんを大事にしろ」って口酸っぱく言ったんだから。もう考えるな。
晴雄　そうだな・・・

良三　オレと一緒で引退後、あまり自由を謳歌できなかったようだな。
晴雄　辞める直前の店の経営も危機的だったし、やめてからも行動制限で・・・毎年ハワイに行って、、、と考えてたのに、結局1回だけでこっちに連れてこられちゃったよ。コロナってやつでね。
茂代　あなたどうせ、私のことを怒ったり皮肉してたのに一緒じゃない。ずっとテレビ見てて・・・
晴雄・良三　うるせぇ、ババア黙ってろ！
晴雄　おまえになんか、なんにもしゃべってほしくねえ。黙れ。
土屋　じゃあ、おつくりと、最初から日本酒？
晴雄　いや、ビールを行きたいね。アサヒ以外で。プレモルがいいな。
土屋　こっち来る前に最後にお酒を飲んだのは・・・
晴雄　もう去年の11月にコウタが連れてってくれた店が最後だよ。ドン・ペリニヨンを飲んだんだ！えへん！
土屋　いまのコウタくんと話してみたかったな、オレも生きてたらなあ・・・
晴雄　最初の一杯がシャンパンの店に行くことが多いんだよ、あいつ。でも、オレはホントは最初にビールをぐぃっと飲みたいの。入院生活明けとか、特にね。
土屋　じゃあ、ビールとつまみで。穴子は、1本まるで行くよね。
晴雄　いいねー。
土屋　Oってがんばってる？
晴雄　がんばってるよ。最後は、去年の夏ぐらいだったかな。店の看板の字、お前が書いたんだろ？ 未だに土屋のことを尊敬していると思うし、よく話にもでていたよ。

良三　子どもや朋ちゃんに遺言は残したか？
晴雄　のこせなかった。でも親父もそうだろ？
良三　そうだったな。オレは突然倒れて、その後、話せなかったから。
晴雄　まさか話せなくなると思わなかったから、オレもできなかった。
敏子　あの子たちは、真面目にやっていくわよ。朋子を守ってくれるはず。
晴雄　その心配は僕もしていないです。
敏子　最後にみんなの顔は見た？
晴雄　ああ、もう無理だ。という瞬間に、最後の力を振り絞って、まぶたを開けたんだ。片目しか開かなくて、そこにはコウタと将太と正二が見えた。それがもといた場所での最後だった。
良三　そうか・・・
順一郎　朋子はいなかったのか。
晴雄　見えなかったけど、その前から声をかけてくれてたし、本当にありがとうと思ってる。あっちの世界では「春にハワイに行こう」と朋子が何回も言ってくれてたけど、それが果たせなかったのが悔しい。
おお、向こうには吉田さんやすーさんがいるのか。こっちに来ちゃったけど、また飲めるのか。うれしい。あっちの席、行ってきます！
良三　うん、行ってきな。

本日、3回目の月命日。仕事がたっぷりで、しかもノンリモートデイですが、ちょこっと抜け出して法要と参拝に参加してこようと思います。