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新・親子セッション:コウタのさまざまな楽器と晴雄の太鼓『20230927 with Haruo Suzuki』

Kota Suzuki
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亡き祖父とセッションできたのなら、今年亡くなった父とも・・・と考えたのですが、寡黙で気難しい彼に僕らは人生相談をすることは少なくて、そんな撮影・録音をするわけもなく、彼の肉声はほとんど残っていません。遺言や遺書さえない別れでしたし。

ただし、父が会社を手放し築地場外市場を去った日、最後にお囃子の演奏に加わったiPhone撮影の動画がありました。そこで、今回は彼の和太鼓とセッションをしようと決め、祖父のときと同様にiZotopeの優れたふたつのソフト「RX 10 Advanced」と「Ozone 11」で不必要な音を分離し消して、父の大太鼓だけを抽出することに成功。

ただし、ここからが大変だったんです。演奏はおよそBPM103なのですが、父のリズムがすごく揺らぐんです。曲の1小節を、1/8、1/16と細分化した縦線で見ると、全体的に前乗りながら、遅れるときもある。とはいえ、それをオーディオプログラミングというテクノロジーでいじってしまうと、過剰な編集で、父の演奏とは言えない。これにどう向き合うかで、僕は1週間悩み込んでしまいました。

結果として、その父のリズムの揺れをいかして、僕がダビングしたピアノやオルガンやベースといった楽器の発音する瞬間を細かくいじっていくことにしましたが、まあ、なんだかこういう背景共有がないと、父と子のラフなジャムセッションの記録でしかないですね。音が揺れすぎてる。

ただ、現代音楽〜サウンドアート的な祖父とのコラボレーションに対し、父とは音楽をやったという感覚が強く持てているのはいいことです。

曲はすごく典型的な12小節のブルースで、キーもC。難しいコードも使っていません。スローブギともいえるし、まあ、ニューオーリンズの典型的な構造です。ファッツ・ドミノとか、ルイ・ジョーダンとか、ビートルズの曲もこの構造のもの、多いですよね。1940年代から現在まで続くものです。

ブギやニューオーリンズにつながる、この12小節展開の音楽は、僕が小学校1年生のときに、友だちのお父さんが教えてくれたもので、一番最初に学んだ音楽の構造でした。(彼に師事し、僕は6年間、作曲と採譜とジャズを学びました。譜面を読まない・書かないピアノレッスン。)

最初に戻るということですね、つまり。一番最初に学んだピアノの弾き方に戻る。近年の音楽をサボる日々で、僕の楽器演奏能力は著しく落ちたので、最初から弾き直そう。それに父はブルースを聴きながらウイスキーを飲む、ニューオーリンズ旅行を夢見ていたし。そんな思いでした。

とはいえ、練習して弾けるようになっても、後ろへ前へと揺れる父の太鼓に合わせて弾くのですから大変です。何テイク録っただろう・・・ベースは意外とササッと弾けたんですが、ピアノだけで3〜4日間はかかりましたね。(集中できる時間が短いので、そんなに膨大ではないですが)

長くなりましたが、そんなこんなの苦心作が、親子で最初で最後のセッション『20230927』です。(次回以降はもっと気軽に・・・)

p.s. - 配信日の今日は祖母の命日。彼女とコラボできる素材はないので不可能だけど、これがようやく形になり、出す日が一致しました。

最後まで読んでいただきありがとうございます! よろしければチップや、仕事依頼もぜひご検討ください◎