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【note117枚目】初めてのロフトプラスワンウエスト・前半

 昨日はこちらへ。「『ルポ池袋アンダーワールド』『娼婦の本棚』合同刊行イベント」

 とても中身の濃い本2冊の合同イベント。本に負けず劣らず中身の濃いイベントでした。けっこう女性のお客さんもいらっしゃった。

 前半は『娼婦の本棚』の内容をメインに筆者の鈴木涼美さんのお話。後半は『ルポ池袋アンダーワールド』の内容をメインに共著者の中村淳彦さんのお話。

 前半。まず中村淳彦さんの「鈴木さんの言語化能力の高さ。それは事象を説明するのみならず、非言語の心象、感情に言葉をつけて言語化し、文章として構築していく能力の高さが素晴らしい。どうしてそのような力が育まれたのか」という感心と問いからトークライブが始まった。
 本の表紙は実家の一部。(階段に合わせた壁書棚と赤絨毯。すごすぎ)まず、家庭環境として必ず本があった。お母さんが趣味で買い集めた絵本が多かったらしい。でも絵本はファンタジー、空想で現実のイメージとなかなか結びつかない&与えられると拒絶してしまう跳ね返りもあってそこまで好きというわけではなかった。ファンタジーに溢れた絵本より、身近に感じられるりぼんとかの漫画が好きだった。(活字には触れ続けてたんだろうな)
身につけようとしたというより、本が身近にある環境と触れ続けてきたことが言語化能力開発の見えない助けになっているんだろうか。「自然とそこにあること」は1番大事なファクターなのかもしれない。

 与えられた、そばにあった絵本からの反発に似た感じ?で、学校から与えられる服飾や価値観に反発して自宅から遠く離れた渋谷へ向かう。今ほど通信手段やネットワークが発達していない平成の時代、女子高生のトレンドは渋谷からだった。憧れもあり、反発もあり。自宅⇔学校が1時間以上かかるから、働く時間と収入効率を考えてブルセラ通い。めちゃくちゃ合理的。パンツ、唾液など売れるものは売る。値段も自分で決めて主導権は女子高生。そんなところにおじさん達が紙幣握りしめてやってくるんだから、そりゃ見下しもするよな…など思ったり。多少危ない橋を渡らない事には女子高生が短時間でお金を稼ぐことはできないのか。昔も今もそうなのかもしれない。
 反発ともう一つ、自分が特別で何らかの価値があるとしていたい気持ちもあった。自分が価値をつけたものを、お金を握りしめたおじさん達が鼻息荒く買い求めにくる。そんな場所での本は、自分に付加価値を増す武器にもなり得たと。ギャップ萌えというやつ?こんなところにいるのに本を…?また、当時のギャルはトレンドを現場と雑誌で摂取していたから、どんな子でも雑誌は読んでいた。だから本屋さんは意外と身近な存在。
 渋谷のブックファーストはギャルの導線に沿ったフロア配置と選書がなされていて、下りのエスカレーターから1番よく見える場所にはふらっと立ち寄って手に取りやすそうな、興味を引きそうなコーナーになっていて、それが良い呼び水になっている事もあった。

 「自分の値段」について話されていたのが興味深かった。自分が何者であるかを色んな方法で形づけようと試行錯誤されているような印象。値段をつけて、手に取られる存在であろうとした。
 話を聞いて、本に書かれたことを引くと彼女の生活と、彼女が読んだ本の密着度がより高まった気がした。はじめに中村さんがおっしゃっていた「言語化能力」はこういうことなんだろうか?
文字で読んで、耳で話を聞いて、お腹にすとーんと落ちていく感覚。書けるし、話せるから受け取る側は感覚をより多く刺激されて理解へ繋がってゆくことが出来る。それを促せる能力というのも「言語化」の一部なのかな。

 心なんてどうせ整わないから言葉を整える
 本の中の個人的パンチラインのひとつ。心が散らかりがちでそれでよく気持ちを下げている私に響いた。心が散らかるなら、せめて言葉だけでも整頓していく。これは私でも身近に実践出来るかもしれないなと感じた。

 ブルセラ女子高生からキャバ嬢大学生、AV出演、東大院卒から新聞社へ入社。
硬派な紙の上の経歴と、自身の生活上の遍歴をA面B面と表現されていたのが印象深い。私はなんとなくカセットテープをイメージした。