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input report 2022.01

ボカコレ、ボカデュオ、などなどイベントごとが続くので、1月中旬以降は「もっといい曲を」「もっといい歌詞を」「もっといいメロディを」とブツブツつぶやきながらさまざまなインプットを行った。

といっても、コンテンツを享受しただけになってしまっては意味がないので、それを記事として言語化することで自分のなかにエッセンスを取り込むし、記事を見たヒトはその上澄みを吸収できる、みたいなモチベーションでinput logをしたためた。

5000字あるので、興味のあるところだけつまんで眺めたらいいと思います。通勤、通学、喫茶店のひととき、ねむれない夜にどうぞ。


夏を想起させるサウンドの話

ボカデュオにむけて「夏の始まり」について考えていて、その過程で「サウンドの"夏性"はどこにあるのか」という疑問が浮かんだので、じぶんなりに解釈した。

ギターを弾いているヒトはなんとなく感じていることかもしれないが、「ど頭でキラキラしたコードをドカーンと一発鳴らすと、そこに入道雲の青空があらわれる」というのが個人的な見解だ。

これはつまり、注意を惹く際の動作特性が似ているという話で、人が青空を見上げたときの「広くて大きなまぶしいものにふと注意を向ける」という体験の再現を、音によって実行するということなのだ。

ギターであれば、コードがキラキラしているほど、海が見える。暑さの質はさまざまなので、都会の夏でもいいし、海沿いの夏でもいいし、好きな夏を表現すればいいと思う。

じぶんが過去にトライした例だと、以下画像のように、6弦から2弦までをカポで挟んで、1弦のみデフォルト開放音を生かして最高音を固定したままコードを鳴らすことで、じぶんの思う夏に近づく気がした。音質はカラッと焼け付く強めのCrunchが映えると思う。

Dmaj7/9 がいちばん近い

大好きなコードをドカーンと鳴らして、そこに身体性を付与していこう。



Kiite Cafeの話

新参者のため、VOCALOID楽曲群について圧倒的に知見が不足していたので、Kiite Cafeに通いはじめた。

結論、すごく良かった。他者のオススメ楽曲が年代を問わず永遠に流れ、その楽曲に対して「今」のリスナーはどのようなインプレッションを返すのか、の知見も同時に得られるという観点で、曲の発掘をしながら感覚のチューニングができて、とにかく最高だった。

このときは午前1時とか2時だったけど、結構アクティブだった

登録方法や使い方はこちらの記事をみてほしい。じぶんもこれを見て参加しました。

この「感覚のチューニング」が、すごく重要だったなと思っている。具体的には「じぶんが『バチバチに良い!!』と感じた曲は、他のヒトも同じように良いと思うのか?」という感性の確認だ。

自分のお気に入り楽曲が流れた際、他リスナーの反応が0-100で可視化されるのが、Kiite Cafeの面白いところなのだ。もちろん作業中・運転中・手が離れている・寝落ちなどは当然想定されるし、そもそも反応が必須なサイトではないので、単純な反応の有無が良さの指標にはならないことは明記しておく。

というわけで、「フロアがアガる曲を選定するべき」というルールはないが、感性の乖離については理解したいので、「この楽曲ならこのくらいのインプレッションが返るかな?」と感じた自分の感覚と「大衆的な良さ」の和集合の面積をはかるために利用させて頂いている。

その観点で、いくつか感じたことは、

サウンドデザインについては、やはり甘さはある程度許容される傾向にあると感じた。そもそも殆どアマチュアの集合体なサービスなので、誰もグラミー賞を期待していないし、自分もそれに甘えている。とはいえレベルは高い方がいいというのは勿論だし、次のセクションで人気曲の音像について視覚的に解説する予定だ。

歌詞については、コンセプチュアルな抽象性と、どストレートな具体性を両立させている楽曲が「人気」だったように感じる。日本語を捻って捻って伝わらないメッセージを埋め込むよりも、ただ難しい言葉を並べて「難解」「格好いい」というイメージの伝達を成功させる方が、結果的に強度が高い。露悪的であっても、伝えなければ意味がないのだ。

加えて、ガチ/ネタを問わず、頭から強烈に注意を惹く曲は強い。「決められたプレイリストを流し聴きする」という行為のなかで、頭からattentionを引くことができるアレンジを埋め込んだ楽曲は、明確に注意を楽曲に引き戻すし、「リスナーがイベントの全曲視聴をすること」を想定した場合の勝ち方のひとつである気がした。

というわけで、恥ずかしながら、自分もおすすめリストを作成した。XX選、と銘打てるほど多くの楽曲を聴いていないが、2021年11月から今日までの間に出会った中で、良いと感じ、かつヒトと感覚の調整をしたくなる楽曲をlistしている。ぜひ聴いてみてほしい。



音声と視覚的アプローチの話

新参者のため、ボカロPという概念に対する解像度も圧倒的に低かったので、見かけたtwitterスペースを積極的に聴講している。

先日、ふらっと入ったスペースで面白い話を聴いた。要約すると、「声を描画できるようになったのはここ最近なので、今後もっと色々楽しくなりそう」ということ。声の描画については、以下ツイートの「Synthesizer Vのピッチモデル」の緑色線を好きに描くことで発声自体をデザインする行為だと思っていただければ。

言われてみれば確かにそうだし、より直感的かつ再現性の出せるアプローチだと思うので、今後はその方向へも知識を伸ばしていきたい。

また、スペース内で共有されていた以下のtwitter投稿をみても、音楽に対しての「視覚的・立体的なキャッチアップ」の必要性を感じる。

ということで手始めに、ざっとじぶんの楽曲を周波数解析にかけてみた。
1枚目の表示にはSoXというソフトを使ったので、terminalを触れるヒトはこちらのQiita記事をみながら一緒にやってみましょう。

『かせきセーター』という曲のスペクトログラム
『かせきセーター』という曲のフーリエ解析

これだけ見てもあまり的を得ず、有名曲との比較にこそ意味があると思うので、2021年にミリオンを達成したある楽曲をiTunes Storeで購入し、ffmpegでwavに変換後、同様の処理を実行してみた。

2021年ミリオン達成楽曲のスペクトログラム
2021年ミリオン達成楽曲のフーリエ解析

前者がBalad Pop、後者はElectro Swingであり、Mix/Masteringはジャンルにもよるため一概には言えないが、ミリオン曲は全体的に音像が整っていて、バッチリ"追い込まれている"感じがバチバチに伝わってくる。言ってしまえば、もっとオレンジの面積を増やせ≒音割れを防ぎつつ音圧を上げろ、ということが、目視で感覚的にわかる。

…といってもやっぱりわかりづらいと思うので、スペクトログラムに曲展開を加えてさらにわかりやすく図示した。

2021年ミリオン達成楽曲のスペクトログラム②

上下に分かれているのは2Mixであるためであり、左右差の小さい曲なら同じものとして考えていただいて構わない。

こうして展開ごとに区切ると、introはintroの配色をしていて、AメロはAメロの配色をしていて、サビはサビの配色だなというのが伝わると思う。そのうえで、1回し目のAメロ〜Bメロは平坦なオケが続くため色味に変化は見られないが、2回し目のAメロ→Bメロへの移行は明確にテンションを上げていることが色味の差からも見てとれる。

そして、この色味というのがそのまま周波数帯であるということがポイントなのだ。どの楽器をどの帯域に入れて、いちばん盛り上げたい場所はどのような色合いになっている?という話ができるようになると、そもそもの楽曲のつくり方が変わってくる気がする。

もちろんこれが推奨というわけではなく、悩んだときのアプローチ方針がひとつ増える、と捉えてもらえたら嬉しい。


異国音楽の話

民族的なアプローチに興味を持った。きっかけは以下のツイートなので、ツリー内までひととおりご覧いただけると嬉しい。

この投稿をうけて、ヒット曲の履修とセットで、さまざまな民族音楽を聴いている。その過程で、リサーチとして行き過ぎてしまったが面白かったコンテンツを2点、ご案内したい。

①カンボジアの失われたロックンロール

3000再生を突破 or 2月3日になるまで無料で観れるドキュメンタリー映像。1955〜65年における文化発展をコンパクトにまとめた映像は、煩雑な活気と希望のあり方が"古き良き"と表現される日本のイメージに似ていた。107分と長いので、興味のある方だけどうぞ。

終盤、現代のカンボジア音楽文化の代表として流れていた若者系Khmer Citizen Songがかなり良かったのだが、歌詞検索でもヒットせず、SoundHoundやShazamでも結果なしと散々だった。

意訳かもしれないが、都市としての力と民族をレペゼンした歌詞が最高だった。以下に引用するので、この曲を知っているヒトがいればぜひ教えて欲しい。フルで聴きたい。

私はプノンペンの娘 すべてが最新
お金 車 家 何でもある
クメール人に生まれてラッキー
私の心も愛も変わらない
死ぬまでクメールを愛す
すべての先祖に乾杯
敬意を払い 犠牲になる
みんな懸命に勉強する

『カンボジアの失われたロックンロール』01:39:45以降で流れる最高の曲の歌詞


②各国のスマホ撮影ライブ映像

民族音楽を求めてまあまあ触肢を伸ばした結果、twitterの謎撮影ライブに辿りついたりした。ここでは2点紹介する。

こっちは民族音楽の文脈でよかったほうで、スマホ撮影のノイズに目をつぶって聴いていただきたい。0:30〜あたりから凶悪なアレンジのエスニックミュージックが「カッコいい」を連発してくる。GuitarFreaks収録のPrimal Soulという曲を思い出したのは、このパフォーマンスがPrimalでありSoulであったからだ。

で、こっちは民族性によらず普通におもしろかったほう。笑顔はヒトから負の感情を奪う。



今月おすすめしたい曲の話

ボカロ曲のおすすめはkiite cafeのリストにまとめたが、もちろんボカロ以外の音楽も聴いていた。そこから3曲を紹介したい。

①羊文学『光るとき』

1月度グッときた曲選手権、圧勝である。

良い歌詞というテーマで考えた時、じぶんの場合は、井上陽水や荒井由実を、志村正彦や山田亮一を、下岡晃や古屋真を、それぞれ限定的に思い浮かべるが、この『光るとき』はその部屋に入ってきた。

かんたんな言葉で、並びも美しく、芯の通ったメッセージ性も備えた、きれいにやろうとするととてつもなくムズカシイことをやっている。何かに圧勝したというよりは、自分が圧敗したという方が正しい。この曲は今後も折にふれて聴くと思う。


②10-FEET『火とリズム』

4〜5年前にリリースした楽曲のPVを公式がようやく公開してくれた。

10-FEETは『2%』の頃から聴いているが、この楽曲であらためて感じたのは、「過去に10-FEETが持っていた特徴を色濃く残したまま、常に洗練し続けている」ということだ。変わらないまま進化し続ける、というのはたいへん難易度が高く思えるが、それをやってのけていると感じた。そして、この曲からさらに2年後に『ハローフィクサー』という化け物じみた曲が出る。

この学びをもって、「さらにいい音楽をつくる」が「別人になる」に到達しないよう留意しながら、今後もさまざまな刺激を取り入れていきたい。


③パソコン音楽クラブ『海鳴り』

3rdアルバムの締めの曲。たとえば轟音×ウィスパーのshoegazerのような、vocalとtrackのテンション差による聴感覚の創出という点で良さを感じた。

そして不思議なことに、どことなく、すこしVOCALOID的にも感じた。いわゆる対ニコニコ動画むけの「きちんとした曲」ではないが、おそらくじぶんの中のバーチャルシンガーに対するイメージに、透明感や無機質なやさしさを感じているからだと思う。

同じアルバムの収録作品でいえば『Panorama』も物凄く良い。海、空、産業機械、風力発電装置など、同じモチーフに魅力を感じているからかもしれないが、良すぎて頭がおかしくなりそうになる。



おわりに

インプット行脚の前に公開した曲は、ドラゴンボールやルパン三世やインディ・ジョーンズをテーマにしたコンセプトソングでした。

これはこれで良い曲だと自負しているのですが、今回のまとめによって足りない部分もちゃんと見えてきたので、次はさらに強い、ダイヤモンドの龍を錬成します。3月あたりに。

とても長い記事なのに、ここまでご覧いただきありがとうございました。次回があったら、またよろしくお願いします。


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