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ボカコレ2022秋のはなし - 太陽の王国へと続く、ながいながい道のり

まえがき

 ボカコレ2022秋ルーキー部門に投稿した『太陽の王国』は、最終発表で17位と大健闘し、自己アカウントからの投稿作品としては初の1万再生超えなど、とてもうれしい結果となりました。皆さまのおかげです。ありがとうございました。

 もともとの性質がサブカル野郎かつ逆張りオタクなので、基本的には「楽曲の良し悪しと順位や再生数は全く関係ないよ」という立場を取っていますが、過度な謙遜や斜に構えた姿勢は、共同制作者のさいろめさんや、聴いて「良い」と表明してくださった皆さまに対して失礼にあたるので、感謝の気持ちを込めて一言。
めちゃめちゃウレシイ……!!


 個人的にも思い入れの強い作品だったのと、時期的におそらく『世界電力1年目』さいごの投稿作品かもしれないことを鑑みて、じつは作品公開前からエンドカードの製作を依頼していました。
 当初は「おつかれさまでした、ありがとう!」のカードだったのですが、結果をうけて「おめでとう!」的なニュアンスを追加したカードにしてもらいました。

 noteのサムネイルだと、画像の上下が切り取られてしまうので、以下のフルバージョンをご堪能ください。

「おめでとう〜ありがとう〜!」(依頼文より抜粋)


 イベント全体の流れとしては、事前にくりたしげたか氏が共有したシナリオ通りであったと感じていますし、再生数分布についても「統計部」の方々がすでに算出されています。
 興味のある方は、以下2つのツイートのリプライ欄を含めた一連のツリーをご参照ください。

 そのため、『まかぎ祭』『ボカコレ2022春』『無色透名祭』の総括記事のような概観への言及はせず、目次にあるような内容をつらつらしたためていこうと思います。8000字くらいになってしまったので、興味があるところだけかいつまんで楽しんで頂ければ幸いです。


1.順位、流行り、さじ加減の話

ルーキー17位は5人いる

 ボカコレというイベントも今回で5回目となり、「ボカコレルーキーXX位」という称号も増加傾向にあります。

 冒頭でお話した通り、ぼくは厄介なオタクなので、2桁位〜100位帯まで含めると、事前に示し合わせた集団行動である程度ハック可能な数字は本質的な強度を示しているわけではないと考えており、文字数制限のきびしいtwitter biographyへの記載が、一部のトップランカーを除いて、実質的に意味をもたなくなる日もそう遠くないと感じています。
(支援への感謝として掲載する等、別の意味合いはあると思います)

 そのような観点から、今回は、記録よりも記憶に残るもの――順位はさておき、いちど出会えさえすれば曲名を覚えてもらえるようなインパクトを持った、特異性の高い楽曲をつくることを目標としていました。

 なので、結果として順位をいただけたことはとても光栄で、ヤッタヤッター!という気持ちは強いのですが、ぼくで通算5人目となる「ボカコレルーキー17位の人」という看板の先の、あの『太陽の王国』をつくった人、として楽曲とともに気に留めて頂けたのなら、個人的な目標を達成できたことを、とても嬉しく思います。


曲調、流行り、なんでもいい

 これは個人的な見解なのですが、ボカコレ2022春での『まにまに』や、無色透名祭での『ポストずんだロックなのだ』の受け入れられ方をみて、いわゆる「流行りの曲」は、つまるところ作り手のなかでの流行りにすぎず、シーン自体は多様かつ無形なものであり、どのような楽曲であっても受けとめるだけの豊穣さを備えている、という、とても当たり前なことに気付かされたように感じています。

 なので、いち作り手として、作りたいジャンルやテーマがメジャーでなかったとして恐れないという考えのもと、あらゆる流行りのベン図の外側にある、2台のドラムセットと複数の民族楽器を打ち鳴らす無国籍型土着音楽を投下するに至りました。
(過去作『きれいな未来』もそうでしたが、ぼくが古代的・原始的なアプローチをとろうとすると、ついつい太鼓をズンドコ叩きたくなってしまいます)

 ただ、無色透名祭後のきくおさんのpixiv fanboxの記事にあった通り、ある特定の音楽知識を要するジャンル、今回であれば民族音楽に特化すればするほど人を選ぶ音楽になってしまうなとも感じていたので、上記のシーン論とすこし矛盾するかもしれませんが、『太陽の王国』にはしっかりとポップミュージックの屋台骨を通し、間口としては広くとれるような形を意識したアレンジにまとめたつもりです。

 とはいえ、ボカコレ2022秋でランキング入りした楽曲群は、TOP100優勝のいよわさん作『熱異常』を筆頭に、音楽的な多様性を感じさせるとても魅力に溢れたラインナップであったように感じます。

 その一例ですが、ルーキー部門上位30曲のシンガーは、こんなにも多様です。なんてったってナクモ&めろうがいる!

(上記のツイートに記載が漏れていましたが、小春立花、冥鳴、Solariaもいます!)

 以前に『まかぎ祭』分析記事でも似たようなことを述べましたが、改めて、イントロや間奏は短い方がいいとか、楽曲は2分台がいいとか、有名シンガーを登用した方がいい等の要素は、あまり関係がないと感じます。


もっと言うと、順位ではない

 冒頭で紹介した栗田さんのツイートに記載がある通り、ボカコレにおける順位は前評判(これは単純に、twitterフォロワーが多い、などでも成り立つ)とイベント中の発見運が支配的であるように感じますので、一部のトップ層を除いて、比較的ちょっとしたきっかけでいくらでも変動し得るイメージです。

 ルーキーランキングで言うなら、例えば『サイコ』が50位、『バズリニキ〜』が78位、『ダンゴムシから降りられない』や『アレじゃね?』は圏外でしたが、これらの楽曲はボカコレ秋の10選(個人的に刺さった曲を10曲選ぶ文化的なアレ)にもよくノミネートされているように見えますし、『バズリニキ〜』や『アレじゃね?』は、ピックアップ枠としてラジオ番組「クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ」でオンエアされています。

 ボカコレは、最終順位に関わらず、公式・非公式を問わずイベント終了後のフックアップが多いイベントです。イベント中は「初動が悪くても楽曲を消さないで!」という注意喚起のツイートも流れてきましたが、個人の経験でみてもそれは正しいなと感じています。

 もちろんあくまで一例なので、再現性を保証するものではないのですが、今回のイベント期間中に期待した結果に届かなかったとしても、のちのち楽曲が評価される場合があるので、焦らずすこし長い目でみてみるのも良いと思います。


2.自薦、聴き合い、また順位の話

 いちおう総括記事なのですこし触れますが、データなんかねえよ、うるせえよ、黙れよ、って感じなので、必要に応じてskipしてください!


自薦や聴き合いの影響範囲

 前提として、投稿作品を聴く側からみると、ボカコレ期間中はとにかく時間が足りません。なので、すべての予定をスライドさせてエナジードリンクと非常食でボカコレに突入する人もいれば、事前に巡回予定者のリストを作って限られた時間のなかでベストエフォート的にイベントを楽しむ人など、時間効率を高める動きについては誰もがある程度工夫していることではあります。

 また、作品を投稿する側からみると、事前にある程度のレピュテーションを獲得していない限りは、多くの人に楽曲を届けるためにはSNSでの波及がすべてとなってしまいます。その構造のなかで、一部では行き過ぎた宣伝行為が加熱し、無差別自薦postや、相互扶助的なランキングハック等、すこし扱いの難しい事案が複数確認されたような印象です。

 このうち自薦については、個別の問題提起に対して、公式見解も出ています。

 自薦行為はランキング、といっても〜100位まで見ると影響はないと言い切れないように見える(し、実際に「ほとんどない」という表現になっている)ので、おそらくゲーム収録や奨励金などの直接的なrewardに関連する上位帯に影響がない、というのは同意見です。

 一方で、ルーキー・TOP100ともに、関係性に基づく相互の聴き合い(≒自薦という言葉に該当しない)の影響は、こちらも〜100位まで見てみたとき、自薦行為よりもしっかり爪痕を残しているような印象があります。


知り合いの曲は聴くし、褒めたい

 ただ、「知り合いの楽曲を聴きに行く」という行動は、SNS文脈、ひいては基本的な人間関係において極めて自然な振る舞いなのがポイントです。だからこそ運営のスタンスとしても、友達の楽曲を聴きに行くのは普通のことなので、相互の聴き合いは容認の姿勢をとっている、と理解しています。

 これが「ランキング掲載のためのビジネスパートナーとして組織的な相互扶助を行う」のであれば話は変わってきますが、悪意の判定はとても難しく現実的ではないと思いますし、この未必の故意のようなものに引っ張られて、ただ純粋に仲間内で祭りに参加した人まで変な目を向けられるのもまた違うと思っています。難しいですね。


 また、相互の聴き合いは、相互の評価(「いいね」や「マイリスト」ほか、拡散の基準など)というトピックとも繋がると思っています。

 例えば、事前の関係性によらず、自身の感性を通してみたときに作品に良さを感じたかどうかを基準にするという評価軸もあれば、知り合いを投稿作品ごとまるっと支援したい気持ちベースの評価軸もあると思います。

 SNSでずっと製作過程を見てきていて、ようやく初めての作品を投稿しました!という人の作品を前にした時、それがどんなに荒削りであっても、過程すべてを含めて「いいじゃん!」と言いたいですし、普通に言います。

 これはつまり、「音楽性に真摯であること」と「関係性に真摯であること」のどちらにどれだけ比重を置いている人か、という話で、スタンスは異なるがどちらも否定されるものではないため、イベント上は共存せざるを得ず、かつイベントの楽しみ方も、良い曲だと感じる基準も、すべてが人それぞれだからこそ、無数の切り口をもった、混乱を生みやすいトピックであったと感じます。


自然発生的なムーブメントが見たい

 このあたり、小難しいうえにテンションの上がらない話なので、みんなで「うるせえ!寿司か焼肉を食うぞ!オラオラオラオラ!」と勢いで流して忘れ去ることがよいと思うのですが、個人的には、ランキングに載った!とか、〇〇に紹介された!というお祭り的な広報合戦にマッチポンプの疑いがかかることが、熱が急速に冷めるような感覚があってとてもさみしいんですよね。

 すこし前の例だと、100日後に即死してしまった爬虫類の話と、その時の人々の反応が顕著だと思うのですが、真偽はともかく、何らかの作為のかげに対するフッと置いていかれたような感覚って、人によってはとても強烈なインパクトになり得るよな、というのを、今回あらためて感じました。

 とはいえ、企業の運営する自由なplaygroundで、内輪のクラスターが無数に交錯しながら、それぞれが適当に場を利用して楽しむのは素敵なことなので、みんな自由にしたらいいよね!という基本線は揺るがないのですが、個人的には、「超でかい竜」や「バズリニキ」に感じた、特定の作品に異彩で殴られた人間たちのつくる自然発生的なムーブメントがもっと見たいので、今後もイベント時はレビュアー目線で作品を掘っていき、やべー!と感じた作品を取り上げていく人を務めようと思います。


3.改めて、『太陽の王国』の話

 せっかくなので、作品自体についても触れます。


きっかけ、モチベーション、他

 2022年の自分はちょっとどうかしていて、物語音楽として『黄金龍1980』『水上都市』を、ポップソングとして『就活東京』『きれいな未来』を、そして無色透名祭の『ポストずんだロックなのだ』を経て、通常投稿の『ことばに花束を』に至るまで、個人のスキルでみて、その時点での最高傑作を更新し続けてきたように感じていました。

 だからこそ、「力を入れて臨むならここしかない」というタイミングで到来したボカコレ秋にどんな楽曲で臨むべきか――他のクリエイターとではなく、過去の自分とどのように戦うかとても迷いましたが、ボカコレ秋というイベントでみても、自分史でみても、新しいことをすれば競合がいないので、これまでやりたいけどやっていなかったアプローチで楽曲をつくろう!という方針に落ち着きました。(つまり戦うことをやめた)

 例えば歌詞については、以下のように過去作品をマッピングして、『抽象的な物語音楽』という軸を立ててみたり、サウンドはエスニック感を意識したり、映像はアニメーション(というか動画を自分以外にお願いすること)にトライしたり、さまざまなことに手を伸ばしながら楽曲を作っていきました。この製作期間は、かなり刺激的で楽しかったです。

 歌詞のマッピング図については、ニコニコ動画のクリエイターサポートカード用に作成したものなので、ところどころ謎の余白があります。誰も見た形跡がないのでこちらに公開しましたが、もしものために作っただけなので、皆さんは好きなコーヒーを自分で飲んでください。

こういうのが好きなので、ぼくは勝手に毎月更新します。


 動画ですが、「#いいねした人におすすめボカロ曲を投げる」系のタグで投げつけてもらった『彷徨える感情』が大好きで、もしアニメーションMVをお願いするならこういう系統がいいな、と思っていました。


 加えて、今回アニメーション製作をお願いしたさいろめさんについても、以前より作品を拝見して「いいな〜」と感じていたので、""太鼓と祭壇と謎の生き物みたいな、中南米の儀式っぽい楽曲""というコンセプトが固まってきたころ、いくつかの線がつながり、「よし!お願いしよう!」となりました。

 過去作ですが、ニコニコニュースでも取り上げられているものもあったりするので、「あ、あの作品のヒトか!」と点どうしが繋がる人もいるかもしれません。また、niconicoよりもyoutubeのほうが作品が多いです。全体的におすすめです。



音選び、役割、ミックス

 トラックについて、スペースでの会話だったり、DMが届いたり、よく訊かれるので、先人(油性さんハイノミさん)に倣って動画形式にまとめました。できるヒトから見ると粗の目立つ作りなので、興味のある方むけの袋とじということで。

 以下、補足です。

 メインのドラムはAddictive Drums 2です。とにかく打楽器が多いので、ボリュームではない形でズドンと抜けてくれるスネアドラムやシンバルに助けられました。バンドアレンジする場合はロータムとフロアタムで適当にズンドコすれば大丈夫だと思います。

 EZdrummer3は前作からの導入でまだ使いこなせておらず、メインドラムのフレーズを補強するパーカッション的なフロアタムパターンを添え物として配置しています。ドンッドンッドコズドンドドンドコ、の16分の裏くらいで仕事をしている想定。

 その他、コンガ、ダラブッカ、ムリダンガム等の楽器を用いたリズムパターンのサンプル音源を3つ重ねています。イントロとアウトロでFlavorを印象づけるため聞こえさせていますが、基本的にはこちらも添え物で、あまり聞こえないがないと寂しい、FXのような思想で鳴り続けています。シェイカーとベルが良い仕事をしました。

 ベースは休符を活かしたジャングルビート的なアプローチと、ぬるぬる動くサンバ的なアプローチの2パターンを基本としています。たまに聞こえる金属音の弦楽器感がとても気に入っています。

 ギターはすべてライン録音です。アコースティックギターは土着感を出すために、エレキギターはロックのジャンルにログインするために取り入れています。Distortionライクなリードフレーズやうっすら聞こえる装飾音的なギターも弾いていますが、役割はだいたい同じです。

 ボーカルは、『月光』にキタニタツヤさんが12人いた話に影響をうけ、NEUTRINOのふたり+ずんだもんで12トラックぶん参加してもらいました。動画ではずんだもんが3回登場しますが、3トラックあるわけではなく、単に楽しくなって1トラックしかないずんだもんを3連続で再生しました。

 だいたい上記のような感じです。その他、なにか知りたいことがあればコメントなどでお知らせください。こういう楽曲、とても楽しいですよ!



映像製作とその他の裏話

 映像製作については、8月下旬に依頼した時点ではワンコーラスのデモ音源程度しか用意できておらず、もろもろ相談のうえ、9月を週毎に分けたスケジュール提案を頂けたので、それに乗っからせてもらいました。

 ちなみに当初のデモ音源はこんな感じです。オリャーと作成したハリボテを土台としたウルトラアバウトなご相談だったのに、きれいにまとめて頂きありがとうございました。

「設計図というか、イメージしている盛り上がり曲線画像」(原文ママ)

 こちらの作業日が週末基準のため、結果的に、毎週それぞれで進捗を公開しあい、それを受けて楽曲に追加したい項目が出てきて、という形で進めていましたが、普段はほぼほぼ一人で作っているぶん、パラレルで物事が進み、かつそのアウトプットが自分の想像力の先にあるという体験は、新鮮で素敵で、とてもモチベーティブでした。


 想像力の先という例でいうと、MV中に登場する祭壇のモチーフなどは、これまで通りひとりで製作していた場合には絶対に辿り着かないshapeだったなと感じます。このほかにも、テーマは厳かながら、同時にポップスでもあるので、かわいいパッケージングを形作るキャラクターメイクなど、とても「良!!」という感じでした。

祭壇のモチーフ。「原始感覚美術祭」にて出会ったとのこと

 エンドカードもそうなのですが、個人的な感情として、王国のみなさんにとても愛着を持っているので、地続きな別の楽曲だったり、どこかでまた出会いたいですね。ぼくが買うので、キーホルダーとかになってほしい。


 その他、リファレンスについて、1曲1曲じっくり語るようなテキストを書くつもりでいたのですが、既にとんでもないボリュームなので割愛とします。ただ1曲だけ、OTYKENのSTORMという楽曲を紹介させてください。よりPrimalで、めっちゃイイです。邪神ちゃんで初音ミクさんが演奏していたムックリも出てきます。太鼓と人は多いほどいいですからね。


おわりに

 個人的な話ですが、11月16日でニコニコ動画の初投稿から1周年を迎えます。本当にすてきな1年でした。

 1周年には間に合いませんが、年内にあと1曲なんらかの楽曲を公開予定です。初心にかえって、その時作りたい楽曲をつくろうと考えていたのですが、あれもやりたいこれもやりたいで5曲ほど案があり、全部作りたいので、自分でも次になにが出るかはわかりません。楽しみ!


 というわけで、最後はエンドカードに戻ってお別れです。改めて、とても長い記事にもかかわらず、ここまで読んでくださったすべての皆さま、本当にありがとうございました!

おめでとう〜ありがとう〜!と言っています


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