9.2 宝くじの日・牛乳の日
雨上がりの空に、見事な虹がかかる日曜日。ミルク色のオープンカーに乗って近距離ドライブをするわたし。
午前中でもまだまだ暑い日差しのなかを、爽快なスピードでぶいぶい走る。胸元を開けた白い麻のシャツに、細身のジーンズがわたしのセクシーな身体を最大限魅力的にみせている。
まわりは野原で、ミルクティー色の一本道。
たまに、白いウサギや栗色の栗鼠が草陰から顔を出して、エンジン音を不思議そうに聴いている。虫も驚いて羽ばたいて逃げる。
「ヘイ、ルーラ。今の時間を教えて」
ACアダプターの力を借りて充電を蓄え中のわたしの眠れるスマートフォンが、エメラルドグリーンの一つ目を開けて答える。
「九時二十四分よ。ストアのオープンまであと三十六分」
「サンキュー、急がなくちゃ」
わたしは一層強くアクセルを踏んだ。秋の匂いのするさっぱりとした低脂肪の風が私のかきあげた前髪を乱す。目的地に着くころにはぺしゃんこになっているだろう。
「速度制限オーバー。速度を落として。でないと通報するわよ」
ルーラが目を赤く点滅させて怒っているので、わたしはその目を長押しして黙らせた。
「悪く思わないでルーラ。きょうばかりは捕まってる暇はないの」
わたしは、助手席に放り投げたままの飴玉みたいな型のかばんから、はみ出る白い招き猫にウインクした。
「今回こそ当たる気がする。そしたらいくらだって罰金払うわ。その前にハワイに移住しちゃうけど」
野原のなかをミルク色のオープンカーがぶいぶい走る。いつだってご機嫌でいることが運をあげる秘訣。口角をあげてブイサインで虹の橋をくぐる。
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