12.20 霧笛記念日・シーラカンスの日
夜闇に沈む洋城のシルエットを
包みこむミルク色の霧の中にある
崖を下へ辿っていくうちに海となり
その冷たい海の深く深くへ潜り
闇より暗き深海のうちを漂う
シーラカンスの
瞳に映る
雪のようなバクテリアの死骸よ
どこかではシーラカンスを
生きた化石と呼ぶというが
このシーラカンスは
人間というものに発見されたことがないので
生きた化石と呼ばれているのは
どこかの海の
別の個体でしかなく
ただ口を開けて
変わらず漂うばかりの
このシーラカンスのあたりに
音もなく降るバクテリアの死骸も
バクテリアからすれば死骸だが
魚からすれば餌であり
その魚ですら
他の者たちの餌となるので
そしてその者も
命を落とせば
バクテリアの餌となり得るため
延々と輪が続くのであり
シーラカンスは
ただじっと
音もなく
光もない
深海のただなかで
輪の一部として
命を繋いでいる
三億五千万年前から
同じ姿で
命を繋いでいる
静かなミルク色の靄の中で
シーラカンスは今この時も
続く輪廻のただなかにいる
12.20 霧笛記念日、シーラカンスの日
#小説 #霧笛記念日 #シーラカンスの日 #輪廻 #JAM365 #日めくりノベル
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?