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1.22 カレーライスの日・飛行船の日

インターネットのお菓子の懸賞に当たった。
届いた封筒を開封すると、中には金ピカに輝くカレーの香りのチケットが入っていた。
待ちに待った一月二十二日だ。
僕は学校を終えるとその足ですぐに新幹線に飛び乗った。
集合場所は都内の一等地だ。
時計を見て、集合時間が近くなってくるほどワクワクしたり、ずっと来なければいいのにと悲しんだり忙しく感情が動いた。
新幹線が走れば走るほど、僕は否応無しに目的地に近くなっていく。
「あー、緊張するなあ」
小声で呟いた声は夕闇に染まりはじめる街の色に溶けた。

最寄駅を出ると、金ピカのチケットを持った老若男女が列を成して一つのビルに吸い込まれていく。
別に先着順でもないだろうに、皆心持ち早足なのはきっと逸る心のせいだろう。
赤い絨毯が敷かれた煌びやかなホールに集まると、それぞれが手に持つチケットのためにほんのり当たりがカレーの匂いになっている。
僕はお昼ご飯を惣菜パン一つにした自分の英断を心から賛美した。

「それでは皆様、屋上へ向かいましょう!沢山の黄金カレーを乗せた飛行船が運の良い皆様をお待ちです!」
順番にエレベーターに乗せられて屋上を目指す。
僕は四往復めに着いたエレベーターに乗り込んだ。緊張して黙っているが、乗り合わせた当選者の顔を見れば皆口元が綻んでいた。

屋上にロープで繋がれているのは、二百人は入るだろうかというほど大きいラグビーボールに籠をつけた形の飛行船であった。
白い階段を昇りきったところで、金ピカのチケットと銀色のスプーンを交換する。
インドの神さまに扮したお菓子会社のキャラクターの金ピカ像などの前にたくさんの長テーブルが並んでいる。
白い布の上にはもちろん、黄金カレーを始め様々な色形のカレーが鎮座している。
「それでは皆さん、良い旅を。いただきます!」
いただきますの言葉を合図にロープが切り離され、飛行船はふわりと宙に浮いて歓声が上がる。
星々の近くで夜間飛行をしながら、熱いカレーに舌鼓を打つ夜。
僕は間違いなく今年のベスト一か二に入る出来事ちなると確信しながら、黄金カレーによく磨かれたレードルを差し込んだ。

1.22 カレーライスの日、飛行船の日
#小説 #カレーライスの日 #飛行船の日 #JAM365 #日めくりノベル

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