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11.27 いい鮒の日
雨が降ってきた。
それに気づいた一匹の鮒が草陰に隠れた。
天井を雨粒が叩いて、水の輪が幾重にも広がる。
それがだんだんと激しく、うるさくなってくる。
鮒は、どうして空から水が落ちてくるのか不思議でならなかった。
川は、そうそうと今日も変わらずに流れている。
流れの速いところも緩やかなところも、全ては水に満ちている。
天井から顔を出すと、そこはぽっかりと空いた空間だった。
川の上は、なんにもないのだと思った。
しかしどうだ。
時折落ちてくるこの水の弾丸はどこからくるのか。
目を凝らしても、落ちてくる場所を見極めることはできない。
鮒は、今日こそ落ちてくる水の正体を見極めようと、水粒に撃たれるギリギリのところまで近寄っていった。
丸い雫が弾丸のように、水の中にぽちょりっと穴を空けた。
穴を空けた透明な弾丸は、水のなかで虹色の光を宿しながらくるりと回転し、見惚れているうちにただの川に還っている。
何度見ても、虹色の光に目を奪われているほんの数瞬のあいだに、弾丸は川の一部となる。
目がチカチカして頭がぼんやりする。
雨が激しくなってきたので、鮒は水の正体を諦めて草陰に戻った。
疲れたので少し眠ることにした。
鮒は、虹色の水の中でたくさんの弾丸を打ち合って遊ぶ夢を見た。
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