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12.11 胃腸の日

けさ道の端に胃腸が落ちていた。
私は家から勤務先である病院へ向かう途中だったので、急いでマフラーに巻いてその胃腸を保護した。
その小ぶりな胃腸はだいぶダメージを負っていた。
一番はアルコールだ。保護する前から辺りに酒くささが漂っていた。この量からするとこの胃腸の持ち主はまだ胃腸を落としたことに気づいていないかもしれない。
ぱんぱんに膨らんで弱った胃から内容物を取り出す。
ビール、日本酒、鳥のからあげ、焼き鳥、刺身、チョレギサラダ、だし巻き卵、あと何故かパンケーキが出てきた。明らかにキャパシティオーバーな量だ。
洗浄を終えると、私は保護した胃をタオルを敷いた透明なケースに入れた。
一枚だけ写真を撮って、静かな棚で眠らせることにする。
番号を7と振って、迷子用の貼り紙を作る。年末年始は特に胃腸の落し物が多くて困る。
私は飲んでも前後不覚になることはないので、これだけ胃腸を落とせる人間が世の中にいることが不思議でしょうがない。
何より大事にすべきものを、アルコールで無くしてしまう人々。
一度無くして泣きながら受け取りに来た人の胃腸がまた数日後に届けられたりすることもまれではない。
不思議なもんだなぁと思い、珈琲を飲んで一息ついた。
プリントアウトした迷子の貼り紙の下の方に「忘年会・新年会の増えるこの時期 胃腸をご自愛ください」と赤のペンで書き足した。

12.11 胃腸の日
#小説 #胃腸の日 #JAM365 #日めくりノベル #忘年会シーズン

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