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2.19 天地の日

天にあるものは地にもあるのだという。
ぼくは天にあるものを数えてみた。
星だ、惑星だ、雲だ、風だ、それから、それから。
いざ数えてみるとあまり無いんだな。
ぼくは、目線を下げた時の地にあるものの雑多さに気持ち悪さを覚えた。
星と、惑星と、雲と、風と、それくらいで生きていけたら。
できるだけさっぱりと、シンプルに、そこに在れたらいいのに。

天にあるものは地にもあるのだという。
天のシンプルさを、ぼくという大地に置き換えてみる。
ぼくのなかにあるもの。
血だ、肉だ、骨だ、電気信号だ、心だ、それから、それから。
これも、あまり無いんだな。
ぼくはぼくのシンプルさに安心した。
天にあるものは、地にあるぼくの身体に似ている。
ひとつひとつは、とてもシンプルに出来ている。
それをまとめる生命力が、天界でいうところの星なのかもしれない。
そこまで考えたところで暗闇からバスが来た。
だれもいないバスに乗り込み、学生服のぼくは山奥に帰る。
 
2.19 天地の日
#小説 #JAM365 #日めくりノベル #天地の日

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