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9.16 マッチの日・家庭の日

一本のマッチが世界を変える。
私が見たマッチ箱の中の箱庭の森。
一本のマッチをかかげて、その青い森に火をつける。
プラスティックと紙で出来た森は
端からパチパチと音を立てて
ヘビ花火のように縮みながら
黒い焦げの塊に変わっていく。

次に私が見たマッチ箱の中は箱庭の幽霊。
白いシーツのような魂に
押しこむように火を着ける。
真ん中からじわじわと
水の輪のように炎が広がり
幽霊は机上の灰になった。

三つ目のマッチ箱には、箱庭の街。
赤と青の屋根が所狭しと斜面に並ぶ
海沿いの街。
一本のマッチをかかげて
真白い教会のてっぺんに隕石みたいに火を放つ
逃げまどう者もおらず
静かな海辺の街は
ゴムの焼ける匂いとともに
端からじわじわ音もなく
とろけた何かに変わっていく。

一本のマッチが世界を変える。
燃やし尽くすことの贅沢を知る。

万能感に捕らわれて
残る箱庭の中身は。

箱庭の思考に火を放とうとしても
湿った世界のマッチはもう
湿気って機能を果たさない。

さようなら、箱庭の森
さようなら、箱庭の幽霊
さようなら、箱庭の街
さようなら、私の箱庭。

9.16マッチの日、家庭の日
#小説 #マッチの日 #家庭の日 #マッチ #JAM365 #日めくりノベル

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