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お菓子の箱の中

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しまっておく。 ほかのひとの。
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#短編

夜のまたたき

真夜中のバスの灯りは独特な色をしていると思う。あまりに静かで、水でも運んでいるみたいにひたひたと進んでゆくから、あの中に人が乗っているだなんて、なんだか嘘みたいな気がしてしまう。

道を行き交う車もほとんどないような夜遅い時間帯だった。町はひっそりと静かで、もうみんな眠っているんだと思いながら私はひとり歩いていた。たしか直前まで雨が降っていたのだと思う。アスファルトが黒く濡れて光っていて、雨上がり

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1月 木の枝 石ころ 道の終わり

その日は霧みたいな粒子の細かい雨が朝からずっと降っていた。窓を開けて目を凝らしてみてようやく降っていることがわかるような、そのくらい細かくて静かな雨が絶えずずっと。

特に予定のない暇な週末だった。寒いし雨も降っているから、私は出かけたくなくて、ずっと布団の中で本を読んでいた。途中で眠たくなったら目をつむって寝て、目が覚めたらまた続きを読んだ。

最後に目を覚ましたとき、日は暮れていて夜になってい

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