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【MOVIE】映画『ルックバック』に見る、音と絵で描く鎮魂歌(レクイエム)としてのアニメ表現

どうも、こんばんは。kei_tenです。

今回は巷で話題の映画『ルックバック』を観てきたので紹介します。

『ルックバック』は、『チェーンソーマン』作者の藤本タツキさんの読み切り短編マンガが原作の映画。
監督の押山清高さんは、劇場版アニメでは作画監督までの作品しかなかったので、鮮烈なデビューになったと言えるでしょう。

オタキングこと岡田斗司夫さんが「革命が起きた」とまで語っていたり、ジャパンタイムズ紙でかなりの高評価というXのポストも見たことから、かなりの期待値を持って観に行かせていただきました。

ぼく自身が第一に抱いた感想としては、音と絵で描く鎮魂歌(レクイエム)映画としての最高峰ではないか?です。

そのポイントを(※注:ネタバレを含みながら)説明していきます。

鎮魂歌(レクイエム)としての、音と絵の表現

本作は重要人物が亡くなってしまうのがストーリーの大きなところ。
それゆえに「鎮魂歌(レクイエム)映画」としての色が濃かったと思います。

上映時間がわずか60分と非常に短い中で、音楽と静止画のシーンが多様されていたところに、その根拠とテーマ性を感じました。

アニメ映画なのに静止画を多様しているところは、思い出というよりも「思い出写真」を見ながら故人に想いを馳せる、そんな世界観への没入を感じさせるものがあります。

確かに、中盤の描写から何となく不穏な空気は漂っているのですが、ストーリー展開から「そっちかよ…」と惑わせてしまうあたりも、なかなかにくい演出でした。

60分の鎮魂歌(レクイエム)映画という作りに、アート性も感じられて映画料金も決して高いものではないという満足度を得られた点は、新たな発見だったとも言えそうです。

他にも効果的な音の使い方が目立っていた

肝心なところで音がしない演出

もうひとつ、この映画(あるいは押山監督)の魅力になっているのが「音」自体の効果的な演出です。

特に印象に残ったのが、とても重要なシーンであえて「音がしない(声が聞こえない)」という手法をとっていたところ。
めちゃめちゃ重要なシーン2箇所で音がしないのですから、これはもう確信犯ですよね。

ちなみに、ぼくは良い映画の条件として「大事なところは見せない」というのを設定しています。
例えば、キスシーンや誰かが殺されるシーンなどです。

また、別の角度ではセリフで説明しないで、画だけでそれを見せて理解させる、という手法も腕の良い監督がよくやります。

今回の押山監督は「音を出さない(声が聞こえない)」という手段で、歓喜の大きさをあえて示していた(想像の余地を残していた)のでした。

逆に音が極端に大きく強調されているところも

その一方で、音が大きくなることでシーンが強い印象を残す、という手法も取られていたように感じました。

本作はマンガを描く、描き手の話が主題であるので、シャーペンでガリガリ描いているところが時々ものすごく大きな音で存在感(時間的ボリューム)を発揮しているんですね。

また、舞台が山形?の田舎暮らしとなっていることからも、感情の高まりや緊張感が、環境音、特に足音に表現されていたようにも感じました。

土を踏みしめる音、雪深い道を歩く音など、そういうひとつひとつのシーンに意味が持たれており、次のシーンに聴衆がグッと引き込まれてしまうように作られていました。

令和のアニメは「音へのこだわり」がスタンダードになる可能性

こういう演出は斎藤圭一郎監督の『葬送のフリーレン』でも感じられたという話は以前noteに書かせていただきました。

直近で話題になっている監督が共通して行なっている「音の演出・音へのこだわり」というのが、今後のアニメに影響を及ぼすことは言うまでもありません。

令和のアニメは「音へのこだわり」がスタンダードになる可能性が高く、今後の連載アニメ・劇場アニメでの演出には注目していきたいと思います。

音響監督はベテランの木村絵理子さん

音にこだわった本作の成功に一役買っていたのが、音響監督の木村絵里子さんだったと言えます。

彼女は宮崎駿監督作品への参加が多かったり、ルックバック同様に作り手を描いた『映像研には手を出すな!』にも参加していたことからも、非常に重要な役割を担っていたことが伺えます。

新進気鋭の押山清高監督×ベテランの木村監督というタッグが、とても良い化学反応を生んだように感じています。

『ルックバック』はぜひ観に行ってほしい名作

ぼくの方ではポイントをかなり絞った解説をしてきましたが、他の方のレビューを見てみると、それぞれの感動ポイントが多様に存在していることがわかります。

それだけ魅力に富んだ作品であり、これだけ話題になっているのですから、是非とも劇場に足を運んでいただき、自分なりの魅力・感動ポイントを見つけていただけると幸いです。

今後のアニメへの影響にも期待したいところですね。

では、また!kei_tenでした。


※サムネ画像は公式HPより引用

▼Spotify Podcastで音声配信もしています
(※観終わった後、興奮冷めやらぬまま公園で録音しているので、音質が悪い点はご了承ください)


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