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梅雨は続くよどこまでも

明けない夜がないように、明けない梅雨もない。
梅雨入(い)ったからには梅雨明ける。

とは言えこの高温多湿との戦いにも飽きてきた。
というよりは、お手上げという方が近い。

心に黴が生えそうだ。
なんなら身体にも。

だから、個人的に梅雨の好きなところを挙げてみようと思う。

雨の音を聴きながら本を読むひととき。
雨に濡れて、より鮮やかになる紫陽花の色。
夏を前に出回り始める甘い甘いとうもろこし。
傘に当たる雨の音、これもよく耳を澄ますと音色が違う。
雨粒の大きさの違いか、なかなかに楽しい。
一雨ごとに大きくなっていく道の草も圧巻だ。

どんよりした空もよく見ると灰色の濃淡が重なり合って水彩画のよう。
夏の空はどちらかと言えばアクリル絵の具のような質感に思えるから、水彩画のような空を楽しむなら今。
そう思って眺めたりする。

駅から少しだけ離れたカフェの2階、窓側の席に座る。
コーヒーの香りとトーストの焼ける匂い、談笑するマダム達の声に、ノートパソコンのキーボードを叩く音。
雨粒のついた窓越しに道行く人を眺めては心の中で彼らにアフレコをする。
たまには実況中継もする。

くだらないと言えばくだらないし、
時間の無駄といえば否定はできない。

言い換えれば「贅沢な時間の使い方」でもある。

なんとなく、梅雨は時間の流れがゆっくりしているように感じる。
長い。
だから、梅雨は長いものとして受け入れて
上手いことその長さを楽しむのが一番だ。

勿論気圧に左右されがちな私にとっては鬼門である梅雨。
何度経験しても“正解”はわからない。
そもそも正解なんて無いのだろうし、不正解もない。

ここ最近は
「心を黴させない」、
これを意識している。

その方法が贅沢な時間の使い方をすることで、
言うなればくだらないことを全力で行い、それを思い切り楽しむこと。

でも黴てもいい。
いつか黴を落とせる日が来る。
寧ろ、チーズの如く黴てこそ価値が生まれることだってある。

なんだっていい。

何通りだってある。
梅雨の過ごし方も人生も。

ただひとつ、断言できるのは
明けない梅雨はない
ただそれだけ。


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