見出し画像

借金踏み倒し(デフォルト)国がやれば怖くない、と

2022年03月17日 記事

ロシア政府のデフォルト

ロシア政府による、外資系企業の資産差し押さえなど常軌を逸した制裁報復の内容。実行すれば信用は地に堕ち、投資家から見放される

2022/3/16(水) 21:06配信 ダイヤモンド・ザイ

●日本政府はロシアとの融和路線と決別し、徹底して経済制裁を科すべき

 今回もロシアのウクライナ侵略をテーマに取り上げる。前回のコラムを読んでいない人はあわせて読んでほしい(詳細は第22回コラム「経済制裁でロシア国債のデフォルト確率は80%に上昇!  ただ、もしロシアがデフォルトしても金融システムや米国経済に及ぼすリスクは限定的だ!」)。

Photo :ri3photo / PIXTA(ピクスタ)

PIXTA(ピクスタ)

 今やウクライナからの難民は300万人を超えていると報じられており、侵略国家ロシアへの憤りを抑えられない。ロシアが日本を非友好国と指定したことに対し、日本政府は「遺憾である」と抗議したそうだが、間抜けな話だと思う。日本は危険極まるロシアと友好関係を続けたいのだろうか?  ロシアが明白に侵略国になった以上、日本は従来の融和路線とは敢然と決別し、欧米諸国と組んで徹底して制裁側に回るのが筋ではないのか?  皆さんはどう思われるだろうか。

●出資比率25%超の外資系企業が事業の停止や撤退で差し押さえ可能に?  

 さて、驚きの戦術をバンバン繰り出すロシア政府。ウクライナへの軍事侵攻を受けて、ロシアでの事業の停止や撤退を判断した外資系企業の資産を差し押さえる検討に入った、と欧米のメディアが先週木曜日に一斉報道。外資の出資比率が25%を超える企業がロシアで事業を止めた場合、その企業の設備や資産を押収して、ロシア側の経営者に事業継続を委ねる枠組みだと報じられている。
  実際、ロシアのウクライナ侵攻以降、国際社会の批判の高まりや日米欧が科した金融制裁の影響を受けて、米アップルや米ゴールドマン・サックス、英シェル、独フォルクスワーゲンなど幅広い業種で欧米の大企業が事業の停止や撤退を決定。もし、今回のロシアの方針が具体的に動き出せば、欧米諸国や外資系企業の反発は必至で、経済面においてもロシアとの対立が深まり、亀裂が走ることになる。
  プーチン大統領の考えはこうだ。「働く意欲のある人の職場を奪ってはならない」「撤退するのならロシアに企業を渡すことが必要だ」「その法的手段は十分にあるため問題ない」。ロシア政府にはこの計画で外資の大量撤退によるロシア経済の損失や混乱を抑え、国内の雇用保護につなげる狙いがあると思われる。しかしながら、我々からすれば、自分たちが仕掛人となって引き起こした侵略戦争の渦中、自らが火事場泥棒をしようという魂胆としか思えない。

●ロシア国民の生活に根付いたグローバル企業の事業停止表明が相次ぐ 

「国際社会の批判の高まり」と述べたが、特に米国においては、ロシアでビジネスを続ける企業への風当たりが日に日に強まっている。ニューヨーク州年金基金などの大手年金基金はマクドナルドやコカ・コーラ、ペプシコなどの投資先企業にロシア事業の停止を求める書簡を送付。これはかなり重い投資判断に基づく措置である。食品メーカーや外食チェーンはロシアで地域密着型のビジネスを展開しており、当然ロシア国民のことも念頭に置いて「できれば事業継続を」という考えがあるためその態度を明らかにしない企業が多かったが、先週に入ってこうした企業群の事業停止表明が相次いだ。

  日本企業においても動きが出てきている。ファーストリテイリングはロシア国内のカジュアル衣料店「ユニクロ」全50店の営業を停止すると発表。またソニーはテレビ、オーディオ機器などエレキ事業においてロシアへの製品出荷を停止、グループ傘下のソニー・ミュージックエンタテインメントもロシアでの事業活動を停止すると発表した。要するに映画、ゲームを含めてグループ全体でロシア事業を停止する形だ。またロシア市場で4割近いシェアを持つJT(日本たばこ産業)は新規投資とマーケティング活動の停止を発表し、ロシア4工場での生産や販売は継続方針と述べていたが、事業環境が大幅に改善しなければ生産を停止する可能性がある、と方針を転換しつつある。
  近年、投資の世界では「ESG(環境・社会・企業統治)投資」の重要性が叫ばれている。企業にとっては、ロシアで事業を続ければ「非人道的」との非難を浴び、撤退してもビジネス全体への悪影響を考えないといけない苦しい状況だ。

●米国は北朝鮮、キューバに続いてロシアを最恵国待遇から除外

  国境を越えて経済的に大きな役割を果たしている大企業が、戦争という地政学リスクで次々に撤退する姿。20世紀には数多くの不幸な戦争でそうせざるを得ないケースは多々見られたが、まさか21世紀においてこのような事例が出てくるとは正直驚きである。それだけ、この問題は深刻であり、憂慮すべきものだと思う。ロシア側は「ウクライナを傘下に収めればよい」「短期間で終結する」「西側諸国にはノーを突き付ける」という想定でウクライナに侵攻したが、あらゆる面でノーを突き付けられたのは他ならぬロシアである。その代償は大きすぎる。
  バイデン米大統領はロシアを最恵国待遇から除外すると発表した。北朝鮮、キューバに続く3つ目の国となり、ロシアからの輸入品に対する米国の関税率は現在の3%程度から32%前後に一気に高まる。石油、天然ガス、ウォッカ、ダイヤモンドなどの輸入も次々と停止されている。
  2000年代前半、BRICsの一角として投資家にもてはやされた時代もあったロシアだが、今やその面影は消え失せ、信用は地に堕ちた。今回の一件で、ロシアが今後、欧米諸国などから投資を呼び込むことはまず難しいだろう。信用を失うのは一瞬、それを取り戻すには並々ならぬ時間と努力が必要である。

著者  ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。太田 忠




どこが日本の平和ボケか、その検証項


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?