数十年ぶりのピアノ調律は、山に登るかの如し
長年調律をしていないとピアノの音はものすごく下がります。
そうなるとすぐに万全な状態には戻らず、ピアノに負担をかけないためにも何回かに分けて音を上げていく必要があります。
「お客さまと調律師が協力してピアノを良くしていく」をモットーにしているので、進めるイメージをお客さまと共有したい。そのためにいろいろなものに例えてきましたが、最近は「登山」が近いんじゃないかと思っています。
一気に頂上までは登れない
音が下がったピアノを1回で正しい音程まで調律しようとするのは、1合目から頂上まで休憩なしで一気に登るような無謀なチャレンジです。きついですよね。もしかしたら無理矢理たどり着けなくもないけど...ボロボロで怪我だらけ、着いてからずっと体調が悪くて寝込んでいたら意味ありません。
なのでピアノもそうならないように休憩をはさみつつ(時には少し戻ったりしながら)無理なく年単位で頂上に一歩一歩近づけていきます。できれば3〜4回目くらいの調律でとりあえず頂上にたどり着けるのを目標にしています。
頂上に着いてからが本当のスタート
とりあえず頂上に着いてもただ到着しただけであって、息も上がっていますし景色を楽しむ余裕はありません。そこから調律をくり返して、頂上で遊べるくらいの余裕ができるとはじめて音色に気を配ったり、そのピアノの個性を活かすメンテナンスをしていけます。
年数が空くほど険しい山
もちろん調律をしていない期間が長いほど頂上までの道のりは長いです。
特に新品の時期の調律回数が少なかったりすると、まだ頂上にはだれも登ったことのない、来るもの全てを拒む恐ろしい前人未踏の山となってしまっています。実際に、作られてから一度も正しい音程になったことが無いピアノというのは結構あって、道の無いところをかき分けながら、探りながらの険しい調律となります。
でも、あるとき一気に視界がひらけて頂上が見える瞬間があって、それはそれでなんとも言えない嬉しさがあります。
道中も楽しめるように
ここも調律と登山は似ているんですが、頂上に着くだけが目的ではありません。
登っている道中、調律が安定するまでの期間も楽しく弾けないと意味がないですよね。万全で無いながらもなるべく道中も楽しめて、確実に頂上に近づいているのを感じられるようなメンテナンスができると良いなあと思っています!
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