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君は永遠にそいつらより若い 津村記久子

優しいなあと思ったホリガイさんは。

どうしようもなく弱っている人のことを放っておけない。特に思い入れもない友達の彼女のリストカットや、一度飲み会で出会っただけの友達の友達、テレビの特番で見ただけの男の子、そしてまだ出会っていない幼い頃のイノギさん。

どうしようもない人生の暗闇に足掻くことすらしなかった、できなかった人たちのことを心の中にいつも留めている。

でも、そこに自惚れじみた正義感は一切ない。ただ一緒に、そのどうしようもない暗闇に絶望しつつ、でもそれでも結局はこれからものらりくらりと生きていけそうな自分に半ば失望し、半ば安心しているのだと思う。読んでいて私も同じような気持ちになった。

自分の関われる範囲だけ関わって、あとは常に一歩引いていたホリガイさんが、物語の後半では自分の足を止めなくなる。

慰めの言葉として、唯一の希望としての
「君は永遠にそいつらより若い」という
絶対的な事実。

その言葉だけでは救えないことは分かってる。でも、君にはそいつらより確実に大きな可能性がある。報復しなくても、痛みに立ち向かわなくても良い。でも、そいつらの何倍も、残された時間があるということに、希望を持って生きて欲しい。

やっぱりホリガイさんは優しい。
津村さんは優しい。

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