自転しながら公転する 山本文緒
淡々とした日常を描きつつも、常に一歩先が気になる展開で、スイスイと読み進めることができた一冊でした。
読み始める前に「あんたには多分分かんないと思うよ」と渡された通り、只今モラトリアム期にいる私は、アラサーの悩みに完全に共感することはできない。これから先どうなるか分かんないし、何が起こるか予測するのも無理だし、でもまぁ結局は何とかなるだろうから大丈夫っしょ!て今何となーく感じている部分が、きっと不安で不安で仕方なくなる時期が来るんでしょう。うん、来そう。
それはつまり、結婚のこと、誰とこれから先の人生を歩いていくのか、というより誰と資産を分け合って共に老いていくのか、親の最期を見送る時、隣に誰かはいるのか。自分の最期を悲しんでくれる誰かはいるのか。仕事のこと、このままの給料で良いのか、もし子どもが生まれたら?親の介護が必要になったら?そういった問題が一気に現実味を帯びて降り注いでくる時期がきっとあるんだろうなと思ったら震える。
でも、もしかしたら人生が自分の思いもよらない方向に進むかもしれない可能性は誰にでもあって、じゃあその時その時の感覚に敏感であった方がいいんじゃない?と思う。
明日死んでもいいように生きないといけないし、100年後も生きてても大丈夫なようにどっちも頑張らないといけないなんて無理だ。どっちも適当にやっていれば良い、じゃなくて適当にやらせてください。きっとみんなそうでしょ。旅行に行けば明日死んでもいいように今を楽しみつつ、ちゃんと貯金とかして色んな保険に入ってるでしょ。
前に人生の先輩に「人生において変わるべきタイミングはだいたい向こうから来るから大丈夫」と言われた事を思い出す。だからそのタイミングを逃さないように人生の流れとちゃんと向き合っていたい。
にしても最後の場面、貫一が都の顔を見て「どうして怪我しちゃったんだよ」て言った時、この人と一緒にいるべきだよって私も思ったなぁー。
エピローグに書かれている2040年の日本がちょっと無視できない状況だったけど、何とかなっていてくれ、頼む!私もかつては日本が嫌いだったけど、嫌いでいてもしょうがないと思ったんだよね。生まれた国のこと好きでいなきゃしょーがない。ただ、あまりにも想像できすぎる未来だったなぁ。山本文緒さん…。
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