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心のスイッチ

仕事で嫌な事があり
引きずった。
しばらく仕事が忙しく休みも取れない。
このままだと自分が保たない。

「午後休み下さい」ともうし出た。
ずっと休みがなかったのを上司も知っていた。
「どこかで今日の残り半分を消化するように」と言ってくれた。有難い。

午後は気晴らしにお気に入りの惣菜屋”おかず家”に行った。平日の昼過ぎだったので空いてる時間でゆっくりと選べた。店主と世間話をし、腹を美味しいもので満たせばストレスも無くなるだろうと、沢山買った。リンゴの冷製スープ、唐揚げ、鰹のカルパッチョ、ブロッコリーサラダ、スパイシーカレー。あぁ早く食べたいな、という気持ちを抑えつつ紅葉が気になり”ふるさと河川公園”というこれまたお気に入りの場所へ移動。
ちょっと早い紅葉を見ながらこれらの美味しい惣菜を食べようと決めた。

ふるさと河川公園の紅葉はまだ色づいてなかった。残念とは思わない。紅葉がなくとも充分綺麗な景色があるからだ。流れる透き通った河。綺麗な新鮮な空気、岩壁は小さなアルプスにいるように壮大だ。悪くない。ゆっくりと景色を嗜みながら遅い昼ご飯を食べていると何やら賑やかな一団が現れた。中型バス2台。それにはS高等学校と書かれていた。僕の地元から近い高等学校だ。ここまできたとなると移動時間だけでも1時間半はかかっているはずだ。なぜに?この場所に。そしてなぜに今日なのだろう。口をもぐもぐして行動を観察する。
何やら植物の生態を確認しているように見えた。公園内をくまなく歩いては気になる植物を鎌で刈り取っていた。しばらく彼等の行動を観察していたが、それよりも僕は美味しい惣菜を舌で味わうのに感覚を研ぎ澄ましていたので一時目を離した。新鮮な空気を吸い壮大な景色を見ながらの美味しい惣菜を食べる行為は自分が若返るように気持ちがよく自然と心が笑顔になった。

”くせになる美味しさ。ハーブとか使った和食が僕は好み”

惣菜を食べ終わりゴミを片付け車に戻り空のペットボトルを2本持って公園内を散歩した。
河の一角に階段があり河の側まで降りられる場所があった。僕は河の流れる水に手を入れ温度を確認しながら2本のペットボトルに水を汲んだ。
飼っているメダカ用の水だ。
メダカは家庭の水道水では死んでしまう。カルキ抜きを入れてもダメなのを知っていた。
メダカは綺麗な河の水で育てないといけない。そして僕の場合は河の水2:1雨水で割ったものを水槽にいれる。色々やってみたけどそれが一番メダカが長生きした。

”この通り下が見える程透き通った河”
”深いところで今日は水深40センチというところか”

水を汲んでいるときに人の気配がして後ろを振り返ると高校生の列。。びっくりしたが手を止められない。高校生たちはゾロゾロと僕の脇を通って河の下流の方向へと列をなして移動していく。そのとき気づいた。河へ降りられる階段はここしかないようだ。
その中の何人かの女の子が声をかけてきた。
「その水飲むんですか?」と。
僕は笑って
「飲まないよ。メダカ飼っているからメダカの水なんだ」と説明した。後列にいた女先生も同じ質問をして去っていった。その先生は「お化粧水にでもするのかしら、と思いましたわ」なんて軽いジョークを一言飛ばして去っていった。
しばらく下流に移動した高校生達を見ているとやはり何やら鎌で植物を刈り取っていた。一体1時間半もかけてここにきて何が珍しくて作業をしているのか結局分からなかった。

”高校生達を遠目から写す”

ふるさと河川公園は冬でもキャンプする人がいる知る人ぞ知る人気キャンプスポットだ。
いつもは人は1人いるぐらいの静かな場所だが今日は高校生の一団が現れたせいで寛げなかった。
その辺に腰掛けて持ってきた文庫本を1時間ばかり読もうかと思ったけど仕事帰りの作業着を着た中年がその辺で寝っ転がって本なんて読んでいたらただの仕事サボったおっさんにしか見えない。
だからやめた。今日は天気も良く絶好の読書日和だったのに。
帰りの車の中をサンルーフを開け放ち走る。普段走るより長い距離をこうして走ると少しばかり冒険してきた帰り道のような感覚にも近い。
今日はこうして気持ちをリセットし明日からの仕事をまた継続していく。しばらく嫌なクレーム対応の処理に追われるがいつかは終わる事だ。くどくど考えても時間が勿体無い。
自然と向き合うとき
その時の心は”無”だ。
ただ目の前の素晴らしい景色に目を凝らし何も考えないだろ。
そんな感覚で日々やり過ごせたらいい。
まだ空はあかるい。
今晩の晩御飯は僕が作ろう。

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