白い雪と赤い華を観劇して

今回はクロジ主催の舞台、「白い雪と赤い華」の感想をつらつらと書いていこうと思います。


※ネタバレにネタバレを重ねています、ご注意ください※


いや〜〜〜めっちゃ重たかった!!!!これ当分引きずるわ、って思ってたんですけどほんとに引きずりますね、だめです。
クロジの舞台を見るのは今回が初めてでした。以前からフォロワーさんに素敵な劇団であるということは聞いていて、機会があればぜひ観劇したいと思っていたので、観劇できるこの機会は、願ってもない機会でした。

私は狩野翔さんを応援しているので、狩野さんご出演の10/2の昼夜10/4の夜公演のみの観劇だったのですが、Wキャストだったって言うこともあって、毎回感じ方や捉え方が違って、とても面白かったです。

また、題名からもわかるように、モチーフは白雪姫なんだろうな、と思っていたのですが、悪役がヒロインということもあり、どうやって物語とモチーフを繋げるんだろうと、そこもワクワクしていました。


始まって最初に驚いたのは、照明と映像の組み合わせの凄さ、また、照明とセットの使い方、この2つです。照明の使い方がうますぎて、きれいに物語に入り込めるんですよ。雨の表現もとてもきれいでしたし、セットと照明をうまく使って屋敷を生きているように思わせるところも、とても美しかったです。個人的には朱音さんの日記を読む蓬生のシーンの照明・映像の使い方が本当に天才だったとおもっていて。いや、あのシーンホントによく考えついたな???ってめちゃめちゃ唸りました。日記の読み上げを、客席にフィルム映画のように伝えていたのですが、それによって大切なシーンが端的にわかりやすく伝わってきて、すごい……すごい………ってなりました。


この物語は書生の生きる時代と、書生の迷い込んだ家の栄えていた時代を行き来します。ここも一つのポイントだと思うのですが、過去と現在を行き来することによって、最後が暗く終わるのではなく、きれいに終わるんですよ。後味悪く終わるのではなく、現在に救いがあったと思っていて。もしこの物語が過去だけだったら、花房の栄えていたあの時代の物語だったら、正直苦しすぎる。そう思います。だからこそ、蓬生は生まれ変わっている必要があったし、朱音さんはそこに囚われている必要があったのだと思っています。


そんな朱音さん。彼女が花房家に奉公に出るところから、過去の物語が始まります。
実家にいる、唯一私を美しい、素敵だと言って慕ってくれる弟を救いたい。そんな強い気持ちを持って、花房の家に来ます。
個人的に苦しかったのは、いやこれもう朱音さんに関しては苦しかったシーンや、こうならなければ……と思うシーンがずっと続いていたんですけど、全部含めて、周りがもっと周りを見れればこんな事にはならなかったのかな…って思っています。
みんな、自分の夢に執着しすぎたんですよね。東様も、醍醐様も、兼近も、勿論朱音さん自身も。
醍醐様に関しては、朱音さんにいろいろなものを託そうとして託せなかった人だと思っていて。
東様、自分が亡くなるときのシーンで、白雪様に「自由に生きろ」ってちゃんと最後の力を振り絞って伝えて亡くなっていくんですけど、醍醐様はそれを朱音さんに伝えようとして、伝えられずに亡くなっていくんですよ。ここでもし伝えられたらまた何か変わったのかな……ってすごく思っていて。自分で大切な人を殺してしまった罪というものが、少しは変わったのかなって……ずっと思っています。
また、大切な人が亡くなったあとに手を差し伸べてくれる人の在り方が違ったら、もっと違ったのかな、とも思います。
白雪様に手を差し伸べてくれた、由良のような手の差し伸べ方をしてくれる人がいれば……と思わずにはいられないです。
きっと、あのタイミングで朱音さんのもとに現れるべき人は、忘却という薬を作り出してしまう天才じゃなくて、褥さんが言っていたような、白雪様に手を差し伸べた由良のような、花房の家から連れ出して行ってくれる王子様だったんだろうな……と思います。
もちろん、蓬生が朱音さんを支えていなかったわけじゃないと思います。実際、彼との約束によって、最後はすべてを思い出せるので。
ただ、蓬生が花房の家に来るにはタイミングが少し遅かった。すでにそのときには忘却を手に入れていたし、罪も重ねていた。そう考えると、あと少し早ければ、もう少しだけ………ほんとに………そう思ってしまって、蓬生のことを考えると余計に辛くなります。
ただ、どんなときも蓬生が作り出した『鏡のおまじない』は、朱音さんの心を照らしていたんじゃないかな?と思いました。朱音さん自身が誰かを笑顔にしたいと感じたときも、蓬生と二人で踊ったあの日も、そして、白雪様を突き放して蓬生が白雪様にこのおまじないを教えたときも。
最後に関しては、朱音さんにとって特別なおまじないだったからこそ、布を外し、自分とは違う人間になってしまった白雪様に、そのおまじないを教えている蓬生に裏切られたと感じてしまったんだろうなって思います。この時の、「なんで……なんでみんな私を裏切るの……?」と言う朱音さんが、ほんとに昔の、まだ忘却を飲む前の朱音さんに見えて、「こんな気持ちいらない」って言った日の朱音さんにみえて、このシーンが私の中では一番つらかったです。


個人的に、この物語で朱音さんの対になる人物が白雪様だとしたら、そんな白雪様を助けた由良の対になる人物は吽慶だと思っています。というか、由良と吽慶がいることによって、朱音さんと白雪様を対として見れると思ってます。
手の差し伸べ方が違っただけで、二人ともそれぞれに手を差し伸べているんですよね。

Wキャストだったので、それぞれの吽慶に違う印象を受けていますし、また由良に関しては狩野さんの由良しか知らないので、また色々変わってくるのですが、吽慶に関しては、それぞれのキャストの演じる吽慶が、朱音さんにそれぞれの『愛』が見えたように感じました。

まず、平川さんの吽慶。平川さんの吽慶は、出逢った頃の朱音さんに本当に興味があって、きっと人間愛より淡い恋心の方が強かったんじゃないかな、と感じました。それぐらい、最後の「愛していたよ」が、切なくて、苦しくて。また、最初に忘却を渡すときの、自分の気持ちには気づいていないけど、東様より朱音さんに興味があると言うのは理解しているところや、その後、東様のためというよりは朱音さんのためにどんどん手を汚している気がして、とても苦しいと感じました。
この人がどんな道を歩くかを見てみたい、というのも、自分の愛する彼女が自分の作り出した薬で変わっていくのを見たいんだろうな、と思いました。だからこそ!!!最後自我がなくなり、忘却がないと狂うようになり、廃人になった姿を見て、愛していたよ、という過去形に繋がったのかな、と思いました。もう愛を朱音さんはその時点で受け取れないですからね。苦しい。苦しい。

次に佐藤さんの吽慶。この吽慶は本当に人間愛だったなぁと思いました。この人は平川さんの吽慶とは違う意味で、自分が作った忘却によって彼女が蛹から蝶になる姿を楽しんでいるように見えたし、変わり続ける朱音さんをみて、とても幸せそうに見えました。また、最後のセリフも「あいしてるよ、あかね」なんですよね。過去形の平川さんの吽慶と違って、現在進行系なんですよ。セリフ自体はとても苦しそうなんですけど、それは火事のこの家の中においていってしまうけどあなたの事はずっと好きだよ、というふうに思えて………。この吽慶という役ひとつで、私はWキャストの真骨頂を見た気がしました。Wキャスト、めちゃめちゃいいですね……ね…………。

またこの流れで私自身が吽慶の対だと考えている由良のことを話させてください。由良、推しが演じているということもあって、結構贔屓目に見てしまっている部分あるのですが、王子様でしたね…とても……。
そもそもなんですけど、由良、めちゃめちゃ行動力のある男の子だと感じていて、なおかつすごく優しい男の子だと思ってます。
そして、この物語の中で、唯一普通の感覚を持っている男の子であると思っています。
花房の家って、実はめちゃめちゃ狂ってるんですよ。物語を見ているとその感覚を忘れてしまうのですが。
だって、アヘンを売ってお金に変えて、人がバンバン死んでいるのに殺した人たちは誰も捕まっていない。手は真っ黒なはずなのに、娘には汚い世界を見てほしくないと言って布で目隠しをする。
この家狂ってるんですよ。この物語自体が花房家の外の人がほぼ出てこないから余計に狂ってることを感じられなくて。
そりゃ白雪様に初めてあったとき由良怖いっておもうわ……言っちゃうわ………となりましたよね。ていうかいきなり目隠しした女の子に「小鳥さん?!」って言われたら恐怖。その反応大正解すぎる。
そんな普通の感覚を持っていて、なおかつ行動力のある由良だったからこそ、白雪様を連れ出せたんですよね。
あと由良、すごく優しい。そう思いました。
自分の村を壊滅させたアヘンを売り出した家の娘が、何も知らずのうのうと幸せに生きているのを知ったら、怒り狂って殺してもおかしくないと思うんですよ。でも、彼は殺さなかった。それどころかこの籠の中から救ってあげたいとおもって、それを行動にうつした。由良のことを小鳥さんと言う白雪様自体が鳥籠の中に入っているのを認識して、その鳥籠から出そうと燃え上がる家に飛び込んで救うの、普通ならできない技ですよ……
行動力と優しさ、そして白雪様への思いでここまでのことをする由良はすごいと、純粋に思います。
個人的に、狩野さんの本来持つ誠実さ、底抜けに明るいところ、ちょっとしたコミカルさと、この舞台における由良の存在が絶妙にマッチしてて、より私の心にスッと入ってきたのかな?と思う部分も大きいです。狩野さんの演じる由良に出会えて本当に良かったと心から思っています。
由良と白雪様がこの先、苦難を乗り越えて二人幸せに生きていってくれるといいなって、めちゃめちゃ思ってます…頼む…幸せになってくれ……笑いあっててくれ………(懇願)


さて!!書きたいことは一通り書いた気がするので、一旦感想はここまでにしておこうと思います!!
またふと思い出したときに、ツイッター上で一人で苦しんでいきます……
ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございました!!

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