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鉛温泉スキー場から人口減少時代の公共施設の将来的な在り方を考える。

今シーズンは雪も少ない暖冬ですが、今週は、まとまった雪が降る日もあって、ようやく冬らしくなってきような気もします。

なかなかオープンできなかった「花巻市鉛温泉スキー場」も1月15日から営業開始しているとのことで、今週末(28日)には「鉛温泉スキーの日」というイベントが開催されます。
このイベントでは、豚汁などのお振る舞いやお楽しみ抽選会などの各種アトラクションが予定されているほか、当日リフト券が半額になるそうです。
興味のある方は、是非行ってみてください!


鉛温泉スキー場といえば、私もかつてスタッフとして勤務していたことがありました。
今から15年まえくらいの市職員時代、まだ鉛温泉スキー場は「ナイター営業」もあり、現地スタッフでは人員が不足することから、市の担当課の職員が輪番制でお手伝いに行っていました。
主な業務内容は、リフト券などのチケット販売でしたが、当時は休日ともなると朝から駐車場が満車となるくらいたくさんの人がスキー場に訪れ、特に年末年始などはスキー場から500mくらい離れたところにある臨時駐車場も満杯になるくらいの賑わいを見せていました。
(当時は臨時駐車場⇔鉛温泉スキー場の臨時バスも走っていました)

一方で、平日のナイター営業は閑散としており、悪天候の日などは1日に1人しか来ない日もありました。
結局、夜間照明やリフト運行のための人員配置など、費用対効果の面であまりにも採算が取れないことなどの理由で、私が鉛温泉スキー場の担当課の時代にナイター営業は廃止になりました。

ナイターの営業があった頃の鉛温泉スキー場の夜の景色は素晴らしく、本当にまれですが、真冬の空に満点の星が輝く日があって、現在は運行していない第3リフトの頂上から、遠く南に北上市の後藤野工業団地の明かりが見える眺望に、寒さも忘れて感動したことを今でも覚えています。

今ではナイター営業もなくなり、来場者数(入込者数)も減少してきています。
私が市の担当課職員としてお手伝いにいっていた2009年は17,873人。それから13年後の2022年は13,655人。(花巻市統計書による)
入込者数は、毎年の天候に左右されますし、コロナ禍があったので単純な比較はできませんが、やはり減少傾向にある。
それでも市内外の子どもたちにとっては、学校のスキー教室などでスキーを覚えることができる場所であり、またスノーボードなどのアクティビティを楽しめる場所として、今でも重要な施設であることに間違いはありません。

一方で、ここ近年、岩手県内の他市町村においてスキー場の閉鎖(休止)が相次いでいます。
2022年1月に盛岡市の岩山パークスキー場が閉鎖。同じく2022年度からは奥州市の越路スキー場、ひめかゆスキー場が休止しています。

実は花巻市鉛温泉スキー場も閉鎖の危機がありました。
もともと鉛温泉スキー場は、民間会社(岩手県交通)が経営していたのですが経営難により閉鎖の意向が示されました。
旧花巻市の住民による存続運動の結果、2001年民間会社から譲渡を受け、花巻市公営のスキー場として現在に至っています。

それから20数年。
スキーセンター(管理棟)やリフト、圧雪車も老朽化してきている現状であり、索道(リフト)運行の資格をもった方も高齢化している状況の中、果たして鉛温泉スキー場がいつまで存続できるのか、心配なところもあります。
人口が減っていくのは確実で、これまでどおりの営業を続けていったとしても、来場者は減少の一途をたどることでしょう。
もちろん、市民のための健康増進、子どものためのスポーツ(運動)機会の付与という側面から採算を度外視して存続していくべきという考えもあると思います。

ただ、先ほど話したように、スキー場設備の維持管理に莫大なお金がかかることが想像される中、いつまでこのスキー場を運営していくのか、考える時期にきているのは間違いない。

これは、花巻市内のどこの公共施設も同じことが言えて、小規模修繕でお茶を濁しながら延命措置を図っていくのか、それとも魅力ある施設として「稼いでいく」ためにソフト、ハード両面の大胆な改革を図っていくのか、それとも思い切って廃止するのか。

市民と話し合いながら、そういった方針をきちんと明確にしていく必要があります。

実はこれが「公共施設のマネジメント計画」であり、花巻市では平成29年3月に、40年間にわたる将来的な公共施設の方向性を示す「花巻市公共施設マネジメント計画(基本方針編)」を策定しました。
この基本方針策定の際には、多くの市民がワークショップに参加しました。話し合いを通じて、市民の間で広く公共施設についての関心が高まり、より実効性のある計画となりそうな期待感がありましたが、その後の基本方針の見直し、各施設の方針を決める実施計画の策定においては、どうも行政における施設の修繕・廃止計画になってしまった感が否めません。

ちなみに令和2年度から令和5年度までを計画とした「花巻市公共施設マネジメント計画(実施計画編)第1次」における鉛温泉スキー場の短期方針は、
・「花巻市鉛温泉スキー場」は、第1リフトの通信ケーブル他保安装置、第2リフトの制動装置等 の改修を行います。
となっています。

「花巻市公共施設マネジメント計画(実施計画編)第1次」26ページ参照


つまり「市民の利用に支障をきたさないよう、小規模修繕(延命治療)をして様子を見る」といったところでしょうか。

他の施設も同様で、各個別施設の在り方について、長期的なビジョンをもった方針が示されているとは言い難い。

鉛温泉スキー場は前述のとおり、お手伝いという形ではありましたが私も実際に一部施設運営に携わり、また小学校で開催されるスキー教室において、PTAのOBとして子どもたちに毎年スキーを教えるなど、自分にとって非常に愛着のある施設です。
しかしながら、廃止も含めてどう運営していくかという方針を、いつかの時点で行政、地域、利用者などで検討していかなければならない。

これは、前回記事にした集団(集落)移転の話と同じで、延命治療を続けてどうにもならなくなってから廃止するのではなくて、明確なビジョンをもって取り組んでいかなければならないと思います。

実は、「花巻市公共施設マネジメント計画(基本方針編)」については、今年度市民参画を行うこととなっています。(以下リンク参照)

https://www.city.hanamaki.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/510/r5.6.15_yotei.pdf

「花巻市公共施設マネジメント計画(実施計画編)第1次」の計画期間も今年度までであり、来年度からの第2次計画もつくる必要があるにも関わらず、いまだパブリックコメント、市民説明会も行われていません。

私は、市民にとっていい計画になるのであれば時間がかかってもいい、というスタンスですが、いずれ先に述べたように各施設ごとにどういったあり方が望ましいのか、将来的な展望を関係者で話し合うべきだと思います。

前回の記事で、地域の行く末を感情論に流されず、現状を客観的に把握しながら地域の将来を地域住民で考えていくよう促していくことが重要だと述べました。

公共施設も同じことがいえると思います。

将来に向けて、今から、公共施設の在り方を真剣に考えるべきと思います。

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