見出し画像

僕らの「理不尽」

 僕らにとって「理不尽」な事が起きてしまった。

(twitter https://twitter.com/numberweb/status/1490870603666108417 より引用)


 冬季北京オリンピックのジャンプ競技混合団体において、高梨沙羅選手の1本目がスーツ規程違反で失格となった件だ。

 
 高梨選手は、日本選手団の1番目に登場し、100メートルを超える大ジャンプを披露。日本は、スロベニアに次ぐ第2位で、2番目に飛ぶ佐藤幸椰選手にバトンを渡したはずだった。

 しかし、佐藤幸椰選手が飛んだ後、失格が判明。

 失格の知らせを聞いた高梨選手は号泣。

 
 3番目に飛んだ伊藤有希選手、4番目に飛んだ小林陵侑選手の踏ん張りと強豪ドイツチームにも失格者が出たおかげで、他チームより1本分少ない記録ながらなんとか予選通過ギリギリの1回目8位に滑り込み、2回目を飛ぶことができることとなった。


 号泣した高梨選手が気を取り直して、2回目98m50cmの飛躍を見せ、佐藤選手、伊藤選手がつなぎ、4位浮上。前日男子ノーマルヒルで金メダルを取った小林選手が106mという渾身の大ジャンプをみせ、3位のカナダチームの4番手が95mくらいのジャンプであれば逆転3位というところまできたが、カナダの選手は100mを超える跳躍をみせ、結果日本は第4位。メダル有力とみられた混合団体であったが、まさかの結果となった。


 ここまでが、僕らの昨日の「理不尽」だ。

 
 ワイドショーやSNSでは、

 「高梨選手を含め4名の失格者が出た。こんなことはオリンピックでは前代未聞」

 「計測者が1人。密室で行われているので通常通りの計測方法だったのか疑問」

 などの声が続出。

 
 中には
 
 「中国で開催されている大会。何が起きるかわからない。ロシアにメダルをとらせるためなのでは?」

 などという陰謀論まで出る始末。

 
 陰謀論ではないが、スノーボードの竹内選手も「不可解判定」で1回戦敗退になったようだ。

(twitter https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1490973174384988160より引用)


 いずれも審査や判定による「理不尽」な結果で、僕らは到底納得できるものではない。

 だが、そのおかげで幸福を得た「彼ら」もいる。

(twitter https://twitter.com/amino_san/status/1490974937175425025より引用)


 カナダ女子のロティットは2日前の個人戦でスキー板の長さ規定に違反し、失格となっていた。「悲しみで泣いていた。動揺したし、フラストレーションも溜まった」と振り返り、今回失格者が続出したことに各国から怒りの声が上がっているが「私にも同じことが起こった。だから例外はないのだと思う」と、述べた。とのことだ。

 
 僕らにとっては「理不尽」で、高梨選手は被害者だが、2日前にカナダの選手が失格となっていたことを知っている日本人はほとんどいない。


 僕らにとっての「理不尽」は、あくまでの僕らだけのものであり、決して銅メダルのカナダを貶めることがあってはならない。



 権威者の気まぐれで甲子園への道が閉ざされたチームもあれば、そのことによって恩恵を得たチームもある。 

 恩恵を得たチームに対し、非難をすることがあっては決してならない。


 

そればかりか僕らだって恩恵を受けていることがあるのだ。


 

(twitter https://twitter.com/foot_ch/status/1084578838707724288より引用)



 僕らは恵まれていることについては忘れ、不満なことについては脳裏から離れない。

 人間とはそういう生き物だ。

 

 今日も僕らにとって残念なことアクシデントが起こった。

 

(twitter https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1490942087264542725より引用)


 この偶然性がスポーツをスポーツたらしめている。

 
 必然的な結果にドラマは生まれない。


 あの失格があったからこそ、僕らは「理不尽」と感じると同時に、それをカバーしようという熱い戦いを見せた4人のジャンパーに心が揺さぶられたのだ。



(twitter https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1491035333815054337より引用) 


 
 高梨選手には4000件以上の激励のメッセージが届けられたという。
 
 天才選手と言われながらも、オリンピックという大舞台には恵まれず、いろいろなバッシングにもあった高梨選手。

 
 彼女の涙は、僕らの「理不尽」とともに胸に刻み込まれることとなった。

 今回の出来事は、彼女が失ったものよりも、もっと大きなものを彼女にもたらしてくれるだろう。


 少なくとも僕はそう信じている。

   

 







 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?