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特定地域づくり事業協同組合制度について

前回の記事で、特定地域づくり事業協同組合についてご紹介しました。
今回は、この制度について深掘りしてみたいと思います。

特定地域づくり事業協同組合制度とは

特定地域づくり事業協同組合制度とは、
1. 人口急減地域において、
2. 中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合が、
3. 特定地域づくり事業を行う場合について、
4. 都道府県知事が一定の要件を満たすものとして認定したときは、
5. 労働者派遣事業(無期雇用職員に限る。)を許可ではなく、届出で実施することを可能とするとともに、
6. 組合運営費について財政支援を受けることができるようにする
というものです。
 本制度を活用することで、安定的な雇用環境と一定の給与水準を確保した職場を作り出し、地域内外の若者等を呼び込むことができるようになるとともに、地域事業者の事業の維持・拡大を推進することができます。

(総務省ホームページ https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/tokutei_chiiki-dukuri-jigyou.htmlより引用)

上記の説明や、総務省のホームページを見ても「なんのこっちゃ」という方が多いかもしれません。

この制度、要は、
「急速な人口過疎化、少子高齢化など厳しい状況となっている地域(過疎地域等)に対し、国や市などが財政等の支援をしながら、地域の産業を維持していくために、地域に人材派遣会社(のような組合)をつくり運営していく制度」
といえます。

事業スキームのイメージはこんな感じ。

(総務省ホームページから引用)

「人手が欲しい事業者が人材派遣を行う組合をつくり、国や市などの支援を受けながら、首都圏等から過疎地域へ移住してくる若者などをターゲットに、複数の仕事を組み合わせて、はたらく場所を安定的に提供していく仕組み」というともっとわかりやすいかもしれません。

いずれ、このような「特定地域づくり事業協同組合」が全国では100以上あって、それぞれの地域で特色のある運営を行っています。

特定地域づくり事業協同組合の事例

山形県小国町「おぐマルーおぐにマルチワーク事業協同組合」

例えば、山形県小国町のおぐマル-おぐにマルチワーク事業協同組合。
この組合では、全国から若者を職員として募集し、職員が複数の職業に従事するマルチワークを行いながら、自分のキャリア形成につなげる取り組みを行っています。
職員は、様々な職業を経験しながら、自分の将来の目標を探求することができる。
事業者は、人手不足の状況の中、戦力になる人材を(短期的にはなるが)確保できる。
職員と事業者、双方にメリットがある「特定地域づくり事業協同組合」の優良な事例と思います。

ちなみに、おぐにマルチワーク事業協同組合では、農業、炭素加⼯製造業、ガス業、熱供給業、宿泊業、飲⾷店、娯楽業、⾷料品製造業等15を超える事業者が組合員となり、職員を雇用しているとのことです。

鳥取県智頭町「智頭町複業協同組合」

また、鳥取県の「智頭町複業協同組合」では、林業をメインとしながら、「地域の人事部」として、あたらしい「働き方」を創出。

林業従事者を「マルチフォレスター」と名付け、「林業以外の事業を行うマルチワーカーとなる」「専業林業者となる」「林業者として独立する」など多様な職業の選択肢を提供していることも特徴の一つです。

ちなみに、智頭町では前町長が代表理事となり「役場主導」で設立準備を進めたとのこと。
総務省のデータによれば、全国においても「町役場」や「市役所」主導で設立を進めている例が多いとのことです。

岩手県では「葛巻町」「大槌町」「岩泉町」が組合を設立

岩手県においては、これまでに「葛巻町」「大槌町」「岩泉町」が組合を設立しています。

ホームページが発見できなかったので、各町の「特定地域づくり事業協同組合」の概要が分かる記事や紹介文をネットから見つけてきました。
いずれも2年以内に設立した比較的新しい組合で、これから活動が本格化していくものと思われます。

花巻市における「特定地域づくり事業協同組合」の可能性

それでは、花巻市において「特定地域づくり事業協同組合」の可能性はあるのでしょうか?

令和2年度に制定された「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」によれば、特定地域づくり事業協同組合が設立可能な地域は、花巻市で言えば「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年法律第19号)」に基づく過疎地域である「大迫地域」「東和地域」が該当します。(それ以外の地域でも岩手県が「人口急減地域」と認めれば該当)

例えば「大迫地域」ではぶどう産業が盛んですが、「ぶどう」も年中一定して仕事があるわけではなく、7月から10月くらいまでは草刈りや収穫で忙しいのに対し、冬場は1日の作業量が減少します。
大迫地域では「ぶどう」農家の減少に伴う担い手不足が大きな課題となっていますが、閑散期に別の仕事ができる「マルチワーク」の導入により、働き手の安定した収入確保が可能で、担い手不足の解消につながる可能性があります。

これ以外にも「大迫地域」「東和地域」の農業、林業、観光業、サービス業などマルチワークを行うことによって、働き手と雇用者のWin-Winの関係が築けると思います。

私もスポーツクラブを運営していますが、仕事量が一定ではないので、季節的にどなたか働いていただきたい時期があります。
例えば、他地域では「スキー」や「プール」などに従事する職員の方もいらっしゃるようです。

これに限らず「学童クラブの支援員」だったり、「ホテルの従業員」だったり、市内でも人手不足の事業者は多く、マルチワークを組み合わせることによって、「働き手の安定した収入確保」と「事業者の人手不足の解消」が可能という意味で、ぜひ花巻市でも導入を検討すべきと思います。

もちろん、市が行政主導で行うにあたっても、民間事業者の意向や働き手の確保など様々検討することがあると思います。
まずは導入に向けて、前向きな姿勢で臨むべきと思っています。

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