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議員活動における生成AIの可能性

1月12日付の岩手日報にこんな記事が載りました。

「生成AIの活用法学ぶ」~県議会特別委~
県議会は11日、4特別委員会と県政調査会を開いた。デジタル社会・新産業創出調査特別委(高橋康介委員長)では、仙台市のITベンチャー企業「MAKOTO Prime(マコトプライム)」の竹井智宏代表取締役が生成人工知能(AI)の可能性について講演した。
生成AIには文書作成アシスタント、事業や企画のアイデア出し、英文作成など幅広い役割が期待できると説明。一人一人に「秘書ができたようなものだ」と例え、生産性向上のために有効活用を促した。
生成AIの普及により「中途半端な頭脳労働は必要なくなる」との認識を示し、「地方の人出不足を補う救世主となる可能性がある。地方ほど活用しないといけない」と強調した。

1月12日付 岩手日報より引用

私も「生成AI」には興味があり、仕事でも活用しているところですが、これが議員活動に活用できるのか、岩手県議会のみならず、花巻市議会でも検討しなければならない課題と考えています。

そこで、今回は「議員活動における生成AIの可能性」について検討してみたいと思います。

市民目線から見る生成AIのメリット

生成AIは、人工知能の一形態で、大量のデータを学習し、それに基づいて新たな情報やコンテンツを生み出すことができる技術です。これは人間の学習と同じように、経験を積んで問題解決を図ることができるとされています。

これまでも「市民参画の重要性」については繰り返し述べてきたところですが、実は生成AIと市民参画は結構相性がいい。
例えば、生成AIを活用することにより、市民の考えや要望が自動的に分析され、市政に反映される仕組みが整えられることで、市政における市民の影響力が拡大することが考えられます。

具体的な事例を上げます。
新たな公共施設をつくるとします。公共施設にどんな機能をいれたらいいか、市民から様々なアイデアを募ります。
これは文章にしなくてもいい。いろいろな思いを多くの市民の方に話してもらって、それをAIで分析し、デザイン案として設計する。

現在、新花巻図書館の建設に向けて立地場所の検討をしているところですが、新花巻図書館の機能についてこういったやり方を取り入れみれば、より市民の声が反映された図書館となるのではないでしょうか。

これは一例ですが、生成AIは公共インフラの整備や保健福祉、教育といった様々な分野において活用が期待されています。市民参画のみならず、行政の効率化や市民サービスの向上といったところも生成AIの強みです。

市議会における生成AIの可能性

次に、市議会における生成AIの可能性についてです。
生成AIは大量のデータを整理し、関連性の高い情報を的確に提示することができます。これにより、本会議、各種委員会の効率化が図れると思います。
例えば、各議員が一般質問する際に、かつて市議会で行われた本会議等の大量のデータベースから関係する質疑を例示しながら質問することにより、より効果的な質問ができると考えます。
(だからといって一般質問を生成AIに丸投げすることはお勧めしませんが)

そのほかにも、市議会議員の報酬や政務活動費など、報酬の妥当性(客観的な指標)が不明瞭だったものに対して、公正かつ合理的な提案を行ってくれるものと思います。

これからのまちづくりに対する生成AI活用の期待

現在進んでいる人口減少の中で、若者をはじめとする将来を担う人材の育成、社会福祉政策、新たな産業の育成等、生成AIが将来の傾向を予測し、最適な施策を提案することで、戦略的かつ持続可能なまちづくりを進めることが期待されます。

また、生成AIが市民の声を的確に取り入れ、政策提案に反映することで、市民は自らのまちへの関与を感じることができ、市政に対する共感を深めることができるはずです。

これまでのまちづくりでも、もちろん市民の声は取り入れられてきました。しかしその声の本質は、特定の団体や一部のステークホルダー(利害関係者)の意見であったり、現在の社会課題を解決せよ!と求める世代の意見だったりしていたのが現実ではないでしょうか?

よく「民意」という言葉が使われますが、多くの若者などサイレントマジョリティの考えを踏まえた政策を実現させようと思えば、市政懇談会やパブリックコメント、地元要望などにかわる「民意」を実際に政策に反映させる仕組みを作らなければなりません。
おそらくそれは、東浩紀氏の「一般意志2.0」や成田悠輔氏の「無意識データ民主主義」のような生成AIと相性のよさげな理論を実装するフレームづくりといったことになると思いますが、いずれ、本当に市民が必要としている的確で効率的な政策決定のためには今後、生成AIの導入は避けて通れないと思います。

(東浩紀氏の「一般意志2.0」や成田悠輔氏の「無意識データ民主主義」については紹介すると長くなってしまうので、参考文献だけ挙げておきます)


生成AI導入の課題

とまあ、いろいろとメリットについて書いてきましたが、県議会の特別委員会の講師先生がいうような、バラ色の未来には必ずしもならないような気がしています。

投票率が50%を切る中で、さきほど話した「民意」を反映するはずの選挙制度を改革する動きも鈍く、国をはじめとする行政が生成AIを活用できるのか甚だ疑問なところが多いです。

これは地方自治体、地方議会になるとますます顕著で、「自治体DX」とはいうものの、電子申請は進まず、FAXでのやりとりや紙ベースの書類作成がメイン、という中で、生成AIの活用は気の遠くなるような先の未来の気がしています。

それから「プロンプトの問題」。
「プロンプト」とは「Chat GPT」など、文書生成AIに対する指示のことで、実は私がこの「note」上で書いている記事も一部「Chat GPT」を利用して書いていますが、この「プロンプト」がなかなか難しい。
ちゃんとした指示を出してやらないと、普通に書いた時より時間がかかりますし、「プロンプト」における内容、手順をしっかりしないと言いたいことがみえない薄っぺらい記事になってしまいます。
「中途半端な頭脳労働は必要なくなる」どころか、結構、頭脳労働は必要になる場面もあると思います。

最後に「法的な問題」。
生成AIは明らかに間違っている「フェイク」な情報を提示することがあります。友人どうしや身内でのやりとりならまだしも、公的な機関が「フェイク情報」に基づき政策立案・実行するなどあってはならないことです。また、著作権の侵害などデータの取り扱いに対する法的な問題も心配されます。
こういった問題をクリアしない限り、生成AIの導入には慎重にならざるを得ない事情もあると思います。


それでも、今後、生成AIとのお付き合いは不可避です。

例えば、近い将来、生成AIによってリアルな自動翻訳による多言語会話が可能になる、すなわち通訳のいらない社会が到来することでしょう。
そうなると外国語の習得の意味付けや、学校でのカリキュラムも変わってきます。

これはほんの一例ですが、加速度的に世の中が変化していく可能性を秘めているのが生成AIなのだと思います。

そこに迅速に対応できるプラットフォームの構築と人材の育成。

これが、今後、地方自治体や地方議会が早急にとりくまなければならない課題と思います。


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