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スイングする市議会での質疑

スイングとは何か

のっけからプロレスの話で恐縮ですが、プロレス用語に「スイング」という言葉(スラング?)があります。
「今日の”オカダ・カズチカ”と”鷹木信悟”の試合はスイングしなかったなぁ」とか「昔の”藤波辰爾”と”長州力”はめちゃくちゃスイングする試合ばっかしてたよなー」とかいう使い方をするわけですが、大雑把に言えば、試合をする選手たちが対戦相手の良さを引き出しながら、噛み合った戦いをすること=「スイングする」というらしいです。

プロレスは、ただ「勝つ」「負ける」だけでなく、「(人間離れした)プロレスの技を披露する」「観客にアピールする」など『魅せる』要素が強く(というかそれが目的の部分もある)、観客を魅了するためには「ロープに飛ばされて相手の元へ帰ってくる」とか「あえて相手の技を受ける」などの技術が必要となってくるわけです。

お互いに相手の技を受けながら、観客を魅了し、噛み合った試合をする・・・プロレスの様式美みたいなものですが、それができる試合が「スイングする試合」となり、その反対が「スイングしない試合」となります。

一つ例を挙げて説明いたしましょう。
今から47年前、『”アントニオ猪木”VS”モハメド・アリ”』という異種格闘技戦(違う格闘技で戦い優劣を決めること)が開催されました。
当時、アントニオ猪木は新日本プロレスのスター選手として人気絶頂。対するモハメド・アリはボクシング世界ヘビー級チャンピオンで世界のスーパースターでした。

その二人が同じリングで戦った試合は、最も「スイングしない試合」となってしまいました。
いきなり寝転がって、アリの足を蹴りで狙う猪木。
スタンディング(立ったまま)で左右の拳を振るボクシングスタイルのままのアリ。
試合は常時このスタイルで経過し、結果、引き分けとなりました。
(興味のある方はこの記事を参照してください)

(Number web  アントニオ猪木vsモハメド・アリは「世紀の茶番劇」だったのか? 酷評の裏で芽生えた“不思議な友情”「アリは俺と2人だけの時は…」)


「実りのある議論」=「スイングする質疑」

前置きが長くなりました。

私は、市議会に関わらず、国会でも県議会でも「実りのある議論」をするべきと思っています。

私のいう「実りのある議論」とは

”質問者(ここでは議員)は、答弁者(ここでは行政の長、行政委員会など)の人格をけなしたり、揚げ足取りをするのではなく、行政課題について住民の声を反映しながら行政が気づいていない問題点等を質し、答弁者は、質問者の質問を真摯に受け止め、必要であれば行政の方針を変えながらよりよいまちづくりを目指す議論”

のことを言います。

これがまさに「スイングする質疑」であろうと思うのです。


「スイングする質疑」をするためには、質問者は住民目線に立って、様々な見地から質問しなければなりません。時には他自治体や世界の情勢などの調査、法的知識も必要でしょう。
「行政と議員とでは情報量に差がある」と言った方がいましたが、少なくとも同じステージに立つ訳ですから、相手を驚かす必殺技くらい準備しておかなくてはいけません。異種格闘技戦よろしく、相手の届かないところで蹴りを繰り出しても、実りのあるものにはなりません。

一方、答弁者は、質問者の考えを頭から否定するのではなく、「そういう考えもあるかな?」といったん受け入れながら、財政的な見地や政策の優先順位などから質問者の提案が難しい場合は、そういったところを丁寧に説明しなければなりません。
「あなたはそういう考え(スタイル)で私はこういう考え(スタイル)だから噛み合わなくて当然」という態度では、議論は平行線をたどり、世紀の茶番劇のようなつまらない議論になってしまうでしょう。


令和5年9月花巻市議会定例会における質疑

現在(9月15日)開会中の花巻市議会においても、「スイングしない質疑」が多く見られた気がします。
相手が受け止められないような独りよがりの技(質問)を繰り出す。
最初の技(質問)はヒットするものの、そこから突っ込んだ次の有効な技(質問)が出てこない。
これは、私も大いに反省するところで、今回の9月定例会においては、事前の調査不足が否めないところがあり、9月13日から9月15日に行われた決算特別委員会でも、あわせて4つの質問しかできませんでした。

しかしながら、それでもすこし「スイングしたかな」という議論がありました。
それは「スポーツ人材としての地域おこし協力隊の活用」の提案でした。

スポーツ人材としての地域おこし協力隊の活用

花巻市は、大谷翔平選手や菊池雄星選手の活躍、そして今年の夏の甲子園ベスト8の原動力である佐々木麟太郎選手の活躍など野球部を中心にスポーツ分野で全国に知られる花巻東高等学校や、山川穂高選手、外崎修太選手を輩出したことで知られる野球部をはじめ、この間まで行われた総理大臣杯サッカートーナメントで全国優勝したサッカー部を擁する富士大学などが有名であり、スポーツのまちとして知られています。

一方で、これからの将来を担うアスリートの育成や小中学校の児童・生徒のスポーツ環境整備についてはまだまだのところがあります。

この問題を解決するためには、各種目のスポーツ団体や保護者、指導者の声を聞きながらマネジメントする人材が必要ですが、そういった方が少ないのが現状です。
また、そういった人材は、例えば学校の先生OBとか行政のOBとかの方が多く、多様化する現在のスポーツ環境に対応できていないところもあります。そういったことから私は以前から「スポーツ人材としての地域おこし協力隊の活用(導入)」を訴えてきました。

これは、市のスポーツ振興課にも提案していたのですが、例えば
・花巻市(岩手県)出身のアスリートで、スポーツを職業としたい方
・花巻市のスポーツ資源を活用して新たな取り組みをしたいと思う方
などを対象に、
・中学校の部活動地域移行における花巻モデルの確立
・花巻を拠点としたスポーツツーリズムのプランニング
・児童・生徒や障がい者、一般の方も利用できるインクルーシブなスポーツ拠点の整備

などのテーマで活動してもらう。

こうすることで、全国に知られる華やかさだけではない、地に足の着いた本当の「スポーツのまち」となると思うのです。

こういったことを背景に「スポーツ人材としての地域おこし協力隊の活用」について、9月7日の議案審議の場で提案させていただきました。

この提案に関し、市長は「地域おこしく協力隊のスポーツ人材としての活用は考えられる」と興味をもって反応していただきました。
これがすぐに採用されるかどうかは別として、担当課に説明しても埒があかなかった提案が、議場で質疑することによって前に進んだことに大きな意義があります。

これこそが実りある議論であり、スイングする質疑なのだと思います。

いつもスイングする訳ではありませんが、この部分に関しては、私の必殺技を受け止めていただいた市長に感謝したいと思います。

議場というリングでスイングする質疑を

議場においては、異種格闘技戦のような噛み合わない、殺伐とした、時にはいがみあうような議論の方が盛り上がる時があります。
ただ、そういった議論感情的になり、「いい」「悪い」の二項対立になりやすく、ただ時間ばかり経過することが多い。
まさに現在花巻市議会で議論が続いている「新図書館設置場所をどこにするか」の問題は、この二項対立の罠に陥っています。

この二項対立を超えるためには、「スイングする質疑」が必要です。
これからはより一層、質の高い質疑による「実りのある議論」を増やしていきたいと思っています。

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