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トフィーズは「オアシス」になれるのか

ドリーム・ライク・ドニー

 「Dream like Donny」これはドニ―ファンデベークがアヤックスから送り出される際のキャッチフレーズである。しばしばTLでマンチェスターユナイテッドでは彼らしくプレーできない、移籍したほうがいい、という指摘が散見され、今夏にはエバートンの移籍が噂されていたものの、スールシャールらユナイテッド幹部の説得により結局破談してしまったドニー。出場試合数も限られ、ついには試合に出ていないことを理由に代表選外にもされてしまった彼の夢は、半ば悪夢へと姿を変えつつある。本稿では、エバートンがそんな彼のオアシスになるのかを前後編に分けて検証していきたい。

大胆だが、繊細

 エバートンとの相性を語るには、彼の特徴を説明する必要がある。前編では彼の魅力を簡単ではあるが、説明していきたい。


適正ポジション

 彼が最も輝けるのはトップ下、攻撃的なMFだ。これは後述の彼の能力と大きく関係する。残念ながら、マンチェスターユナイテッドではCAMでの出場数は通算13試合にとどまっている。まああの化け物がいたら確かに難しいかもしれない…

能力1:突撃!

 ここからは彼の能力について詳述していく。一つ目の能力は、ボックス内への侵入である。ドニーといえばこれ、と思う方も多いのではないだろうか。

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具体例を見てみよう。青丸のCFが空けたスペースに、ドニーが突撃。

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そこにツィエク(現・チェルシー、シエシュなんて聞いたことないんだからねDAZN!)の美しいパスを受けたドニーが、豪快にネットを揺らす。シンプルだが、美しい。

能力2:オフザボール(空間把握)

 これはエリア内への突撃と関連する能力でもあるのだが、彼の空間把握能力は素晴らしいのだ。味方の位置と自分が行くべき場所を一瞬で判断してしまう。以下の局面を見てほしい。

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カウンターの場面である。全体がスピードアップする中で、一瞬の判断ミスはチャンスを台無しにしかねない。

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ネレスが内側に入り込む。相手DFがつられて後ろに広大なスペースができることに、一瞥で気付く。

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そのスペースに走り込み、少ないプレッシャーでクロスを受ける。相手GKはボールがネットに叩き込まれるのを見届けるほかなかった。得点の嗅覚、という言い方もできるかもしれない。ともかく彼のポジショニングは秀逸だ。

能力3:オフザボール(自己犠牲)

 彼のサッカーIQの高さは、なにも自分のためにスペースを見つけるためだけに使われるのではない。周りを活かすプレー、これも彼の特徴だ。

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サイドからマイナスのクロスが供給される。この位置なら待って合わせることも可能だ。

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しかし彼の選択は違った。走りこむことで、敵DFを引っ張る。そして自身の背後にスペースを作り、そこに走りこんだマズラウィに決めさせる。ワオ。    

 ドニーはボックス内ならば自分で狙うことも多々あるため、ただ「ニアに走りこむ」というセオリー通りに動いているわけではない。彼の視野の広さ、オフザボールのセンスを鑑みると、たとえ赤い悪魔といえどもベンチに座らせておくには勿体ないと言えるだろう。

能力4:パスセンス

 ドニーのパススキルはあまり注目されないが、実はこれも彼の能力の一つである。

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 相手DFに跳ね返ったボール。逆サイドにはドルベリ(現OGCニース)がドフリーだが、相手DFに囲まれている現状を鑑みると、正直平均クラスの選手なら通せないだろう。

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ま、ドニーは違うんですけどね。見事なパスを通し、ゴールへとつながるのであった。このケース以外でも、彼は長短のパスの精度も高い上に、ワンタッチやヒールでボックス内を混乱に陥れることがある。これはまさに世界最高の育成組織をもつアヤックス出身者ならではといえるだろう。

能力5:献身性

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(引用:Scouting Report: Donny van de Beek

 これは19/20シーズンのVDBのヒートマップである。これを見ていただけるとわかるが、非常に献身的なタイプだ。90分間汗かくことをいとわない。このような選手を嫌うサポーターがどこにいるだろうか…?

能力6:トランジションの速さ

 近年インテンシティ、トランジション、プレッシングなどたくさんの横文字がサッカー界では重要視されるようになってきた。どれも重要な要素だが、選手たちのアスリート性が向上しカウンターの鋭さが上がっている今、トランジションの遅さは致命傷になりかねない。しかし彼は攻守の切り替えが早く、守備もさぼることはない。

能力7:決定力

 彼は決定的な仕事もしてくれる。見ていただいたほうが早いだろう。

cf) Box to Boxとしての適性

 上記に紹介した能力から、「ドニーってBox toBox としての適正もあんじゃね...?」とお思いになっている方々もいると思う。確かに、彼にはその適性がある。しかし、その起用は彼の魅力を半減しかねない。彼は守備をサボらないだけで、守備の負担を負わすべき選手ではないからだ。ゆえに、「最も輝く場所はどこか?」と言われればトップ下である。

彼が必要とするもの

 これまでドニーの能力を記述してきたが、フットボールは11人のスポーツである。彼一人が突出していても、世界のトップレベルではチームが機能しないと良さは出ないというものだ。私は彼が特に必要とするのは「パサー」と「共通理解」、この2つだと考える。

 スペースに走りこむ彼に「パサー」が必要なのは言うまでもないだろう。ではなぜ「共通理解」が必要なのか。

 例えばこのシーン。直近のマンチェスターユナイテッドvsニューカッスルユナイテッド戦である。

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 終盤の局面。ドニーがポグバにボールを下げ、ワンツーを狙って後ろに走りこむ。

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 ここには世界屈指のパサーがいるが、「共通理解」がない。故に、彼の裏抜けの意図は汲まれず、リンガードにパスが渡るのであった。これで決まってしまうのも、すごい点ではあるのだが。

まとめ

 彼は大胆なプレースタイルを持つ選手と言えよう。だが同時に、周りとの関係が活きて初めて魅力が増す繊細な選手なのだ。その選手がエバートンに来ればどうなるのか、次回後編で詳述したい。



 最後までお読みいただきありがとうございました。戦術素人、適当画像などお見苦しい点が多々あったこと、お詫び申し上げます。

 ほかにもドニーの魅力や、私の間違え等ございましたら、お気軽にコメント欄でご指摘いただけると幸いです。

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