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理想論でしかない高齢者介護が介護職を消費する

#介護職 #高齢者医療 #高齢者福祉 #PS2021  #日々雑感

現役介護職やすちんさんの高齢者福祉に行き詰まるツイートを見つけた。

うん。 日々終わりに向かっているのを見続けることに疲れてきました。

これがもらったリプライだ。

人生の終わりに向かう高齢利用者/患者のケアを続けるだけなら、それほど疲れはしない。
疲れ果て徒労感しか残らないのは、この世から去りゆくのに失っていく身体の機能を、働きかけることで補える幻想を押し付けるからだろう。
人間歳をとれば機能は衰えるのはこの世の常なのに。

現在の高齢者福祉/高齢者ケアに関わる人は、絶対徒労感を無理やり吹き飛ばして仕事をしている。徒労感が吹き飛ばせなくなったら、燃え尽きて退職するだろう。
そして2度と介護の仕事にはつかないかもしれない。

高齢者福祉や高齢者ケアに関わる仕事の離職率が高い原因は、低賃金で劣悪な労働条件の2つと決めつけられている。
しかし本当の原因は、介護保険導入で急に方向転換した高齢者福祉の方針とお花畑の理想論の2つではないだろうか。厚労省が掲げる「介護が必要になっても、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができる、質の高い保健医療・福祉サービスの確保」という高齢者福祉の方針は非現実的だ。
厚労省の掲げる高齢者福祉の理念通りのサービスを受けて尊厳ある生活を送っている利用者/患者がいることは認めるが、それはごく一部でしかない。

お花畑な理想論を押し付けられて、介護職は高齢者ケアに疲弊する。
「高齢者の尊厳を守り、本人の能力に応じて自立した日常生活を送る支援をする」介護の方針を実践できるほど、予算も人材も確保できていない。
介護保険導入から20年たった今でも、介護に関わる人材は不足して施設などのハード面は未整備だ。全てが不足した状況で、「高齢者の尊厳」「高齢者の自立」を押し付けられる介護職。
未整備の環境で完璧な高齢者の介護を要求することが、どれほど無謀で無理難題なことか見て見ぬふりをされている。

自立を支援するといっても、利用者/患者本人にその気がなければ自立した日常生活を送れない。
利用者/患者本人をやる気にさせる資源が不足した状況で、自立を嫌がる利用者/患者の支援をするのが介護の現状だ。自立ができない利用者/患者が増えれば、介護職は「介護の質が悪い」と批判を真正面から受ける。
教育・資格系の企業や不動産会社など、保健医療福祉と無関係の企業が高齢者介護に参入してきた。経営者は必ず保健医療福祉関係者がベストと決めつけないが、介護サービスと接客の区別がついていないことが多い。だから介護職員に利用者が介護業務以外の仕事を依頼されても、断らず業務遂行するように指導する経営者が存在する。
介護職は利用者/患者の希望を全て受け入れる仕事ではない。
家事代行サービスや付き添いとは全く違う職業だ。

介護保険導入とともに高齢者の人権を声高に唱え始めた政府や介護施設に、介護職は戸惑いを感じた。身体拘束が日常の寝たきりにさせていた老人病院が、突然「縛らない介護」に方向転換する。人員は不足したままなので、とても利用者/患者の対応はできない。
転倒すれば事故報告書を管理職に提出し、家族に説明する。ほとんど面会に来ない家族から、苦情を言われる。管理職からは「介護の力不足」と評価される。
身体拘束しない高齢者介護を「介護職の誇りを感じ、専門性を高める」と勝手に美化される。
美化された記事を書かれても、介護職にメリットがあるのかは疑問だ。介護職は美化されて疲弊し続ける。

高齢者施設や病院に依存していた高齢者介護を、厚労省は「住み慣れたうちに帰ろう」と在宅介護に舵を切った。理由は増え続ける医療費の削減のためで、高齢者の思いを汲み取ったからではない。
自宅で介護が必要な親の世話ができる子ども世代はごく一部だ。子ども世代は仕事があり育児がある。
在宅介護件数が増えないのは家族の事情で、介護職に責任はない。

たまに面会に来て「世話してない」「寝たきりにさせてる」と苦情を言う家族の相手をするのも介護職がほとんどだ。
経営が保健医療福祉と無関係の企業だと、「苦情があるのに対応してない」と注意を受ける。
言いがかりや粗探しをされ、家族から怒鳴りつけられるのも介護職。
それをハラスメントとして対応しないのが、介護サービス経営者だ。

病気で失った身体の機能も、残された能力で補えることはわかっている。
しかし施設のハードと十分な人員と本人のやる気がなければ、残された能力は引き出せない。
引き出せたとしても、それが利用者/患者のメリットになるかわからない。
進行する病気や加齢で、身体の機能は低下する。現状維持すらできない。
利用者/患者の日常生活動作の介助量が変わらなければ、「介護のやりすぎ」「残された能力を見ていない」と評価されるのは介護職である。
第三者の身勝手な称賛や批判で今日も介護職は、利用者/患者に徒労感しか残らないケアを提供している。

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