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【積んでた読紹介】未読の悪魔を乗り越えて

文庫本は何冊積んだら倒れるか。

積んだことはない。いや、めっちゃ積んでるんだけど検証を目的に本を積んだことはない。
じゃあなんなのかと聞かれたら、本のタイトルである。本の雑誌社で出版されたこちらは、本に関わる様々な「気になる」を徹底検証しまとめたもので、わたしは帯にあった『ジャン・バルジャンはいつまで出てこないのか』云々を見て買おうと決めた。
ちょうど(いつまでビヤンブニュ司教の話しとんねん……)と50ページまで読んだレミゼを積んだところで、この本を読んだ結果先に進める気が一切なくなったのを覚えている。あれから5年経つがレミゼはまだ積んだままだ。
その中に『未読の悪魔』の話が出てきた。本には買ってから読むまでの賞味期限みたいなものがあって、積んだまま時間が経つと『未読の悪魔』が取り憑いて読まないままになってしまう的な話。5年前に読んだものなので思い切りうろ覚えだ。耳の痛い話である。積み本80冊の女には未読の悪魔を退けるのは荷が重い。何せ、2冊買って1冊読んだら満足してまた2冊買ってくるようなトリ頭なのだ。そら80冊積むわ。
減らそうとは思っている。積読消化月間という、どこの標語だよと言いたくなる独自イベントを開催したり(20冊減った)、新刊の購入を控えたり。それでもやっぱり、積読が減るかどうかは運の要素が強いと思う。そりゃあ、何年も積んである本よりさっき本屋で買ってきたやつをまず読みたい。たまたま積んでた本の著者の他作品がドラマになったとか、そういうことがない限りなかなか積読は減らない。
そういうことで未読の悪魔と日々戦いながら劣勢を強いられている影法師が、運良く勝利を収めたかつての積み本をいくつかピックアップして紹介してみようと思います。


①行成薫『バイバイバディ』講談社

積読歴……購入日より半年

タイトルにつられて同じ作者の『僕らだって扉くらい開けられる』(集英社)を買ったら思いのほかハマったので作家ローラー作戦してみるかと色々買い揃えたらびっくりするぐらい読まなかった。ローラー作戦って「帰れま10」でしか聞いたことねぇよ。
そんなこんなで積読の中に行成薫の文字が結構ある。決して作家さんが面白くないわけではなく、買い揃えたらちょうど仕事が繁忙期に入って読書どころじゃなくなってしまい……というのが正しい。
内容はどこかで見たことがある設定のオンパレードだったけど、使い古されてるってことはそれだけ需要のある物語のジャンルだってことだから普通に面白かったです。

②伊与原新『八月の銀の雪』新潮社

積読歴……貰った日から8ヶ月

学年時代のバイト先の同僚から就職祝いに貰ったはいいが思いっきり積んでた。自分で選んだ本ですら「これは外した」ってなることが多々あるのだから、他人に貰った本ってもっと敷居が高いんだよな。
……と思ってたんだけど、文庫化した『月まで三キロ』(新潮社)を読んだらそれがかなり嵌って、作者の他の作品を探してたらどこかで見たタイトルが出てきました……というお話。
1冊通しての主人公が出てこないから続編とは言い難いんだけど、ほとんど続編みたいな感じの理系群像劇でとても良かったです。
ちなみに『月まで三キロ』をきっかけに伊与原新にどハマりして今では『お台場アイランドベイビー』と『磁極反転の日』という全然どこの本屋でも見かけないんですがみたいな2冊以外は全部揃えています。『ブルーネス』という本が個人的にはおすすめです。理系の群像劇を書くと他の誰にも描けないような感傷をもたらす人なのでぜひご一読を。


③堂場瞬一『ルーキー』中央公論新社

積読歴……購入日より9ヶ月

かつて堂場瞬一の著作を全制覇するなんて息巻いてた時期があったんですが、元新聞記者さんで恐ろしく筆が早いため、売れっ子連載漫画家も真っ青になるレベルの頻度で新刊が出てくるので早々に諦めました。下手したら月イチで文庫書き下ろしの新刊が出てきます。ほんとに人間なんでしょうか。
シリーズでいくと、
・『刑事・鳴沢了シリーズ』(完結済)
・『失踪課シリーズ』(完結済)
・『アナザーフェイスシリーズ』(完結済)
・『犯罪被害者支援課シリーズ』(総合支援課シリーズに変わって継続中)
・『追跡捜査係シリーズ』(継続中)
・『ラストラインシリーズ』(継続中)
・『SCUシリーズ』(継続中)
は一通り揃えておりますが、シリーズ継続中だけでも年に4冊は新刊が出てくるんですよ。それを追いかけるのにいっぱいいっぱいで、古い作品に手を出す暇がなく、9ヶ月積んだこの本も読み終えてシリーズの次の話買おうとはならなかったし、鳴沢了シリーズも4冊読んだとこで積んだまま4年経った。
基本的にオーソドックスなサスペンスなので火曜サスペンス見る感覚で読むのがおすすめ。


④中島らも『ガダラの豚』集英社

積読歴……購入日より1年2ヶ月

2巻が手に入らなくてずっと積んでた。なぜか2巻だけ手に入らなかった。そして手に入って読み始めたはいいものの、途中何度もふたたび積みそうになった。
スプラッタとかホラーとか絶対見れない人なのですが、B級ホラーの決定版みたいな作品のためスナック感覚でサクサク人が死んでいきます。そして死に方もなかなかエグいです。2巻の途中からB級ホラーモードに入っていくのですが、(あ、これずっと2巻だけ手に入らなかったの、読まずに積んどけっていうお告げだったのか)とちょっと思った。
同様に、「こどもの一生」「空のオルゴール」にも似たような気があるので、中島らも作品を手に取る時はお気をつけくださいませ。知らずに手に取って血を吐いたアホはこちらです。


さて、いかがでしたでしょうか。
お分かり頂けたかと思いますが、
・日常の忙しなさから開放された
・同じ著者の他作品が運良くハマった
・著者自体を追っかけてる
・そもそもシリーズ途中の巻が手に入らず積んでただけ
そういうことです。そういうことでもなければなかなか積み本は手に取らないです。
ぶっちゃけ読まないだろうなと察しつつ買った本もたくさん本棚にあるわけで。伊坂幸太郎の『死神の浮力』の参考文献を追っかけてパスカルの『パンセ』買ったけど序盤で匙投げて積んだままとか。
でも森見登美彦も『熱帯』で本棚は趣味趣向だけではなく見栄も入ってるもんだって(意訳)書いてあったし。本棚ってきっとそういうもんだと思うわけです。
え?床に積んでるんだから本棚関係ないって?
知らん。

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