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宮本恒靖という生き方

無茶苦茶だよ……。
7勤1休6勤1休5勤。次の試合までに一本noteを上げるという努力目標は、見事に努力目標に終わった。特に誰も期待してないnoteとはいえ、更新パツンと途絶えてごめんなさい。
起きたらもう仕事に行かないといけない時間で、帰宅したらもう寝ないと明日に響く時間である。それでもワーカホリックな影法師はせっせとDAZNで試合を眺めていた。ときに自室で寝落ちしながら、ときに通勤電車に揺られながら。
大した社員じゃないのにな。使えないということは、使い潰せるということだ。そうやって身を削って、世の社会人ビギナーズは信頼とやらを勝ち取っていくのだろう。

変わらぬ日常が続くのであればnoteなんかバックレちまえばそれでいいのだが、そうも言っていられない事態が起きた。このままならいつかそうなるとは思っていたけれど、それが今とは思わなかった。
いつだってそうだ。現場はわたしが思うよりも先を行く。そうじゃなかったらこのクラブは30周年をJ1で迎えるなんて出来なかったはずだ。まぁ後任人事は白紙らしいし、後先考えずにやっちまった感はあるが、世の中には判断が遅れて取り返しのつかない事になった例だっていくらでもある。今回の判断に甲乙をつけるのは未来であって今じゃない。今この場にあるのはひとつの事実だけだった。

ガンバ大阪、監督人事の交代。

宮本恒靖、解任。

今季10戦、わずか1勝。そしてたったの3得点。どうしてこうも点が取れないのか。その謎を探るために我々はアマゾンの奥地へ向かうわけもなく、監督に文句を言ってみたり、クラスター発生を嘆いてみたり、Siriに聞いてみたりした。

Hey Siri、全然点が取れないんだけどどうやったら勝てる?
答えは返ってこなかった。当たり前だ。

無得点の時間が長引けば長引くほどチームの空気はピリつき、キーパーの東口が試合終盤にやけくそシュートを打つまでになった。守れていないわけではない。だから余計に攻められないのがもどかしい。現場はそろそろ限界だったんじゃないのかと思う。選手も監督本人も。彫りの深いくっきりしたツネ様の目元が、試合の度に不健康に窪んでいくように見えた。

クラブ史上初のリーグ優勝を達成したときのキャプテン。ユース上がりの純粋培養ガンバ大阪産。クラブのレジェンド監督とタイトルを手にすることに夢を見た。
二度目の降格に片足突っ込んだシーズン途中に監督を引き受け、連勝街道にのせて中位まで持ち込んだ。2年目は夏の移籍市場でフロントが主力を大量放出。3年目はコロナで長い中断、今季もクラスターで活動休止を喰らった。
どんなクラブにも平坦なシーズンなんてない。それにしてもツネ様は、ずいぶんと強い逆風に煽られていたように思う。不運だったかと聞かれれば、100人中120人が肯定するはずだ。監督ビギナーだった2018年から、色んなものをすり減らして、そろそろ丸3年。上に積むよりも今あるものを削って勝ち点を重ねるしかなかったんだろう。
そんな中でも、クラブのウェアを完ぺきに着こなし、背筋をしゃんと伸ばしてベンチ前に立つ姿はシンプルにかっこよかった。反町隆史や西島秀俊を立たせたとてああはなるまい。わたしたちは、クラブのレジェンドだから一緒にタイトルを取りたかったわけではない。宮本恒靖だから、たぶんみんな一緒に優勝したかったのだ。

名将か否かはわからんが、知将ではあった。そして監督就任の経緯からしても、人柄は澱みなくいいんだろう。頭が良くて顔と運動神経がいいまでならともかく、人柄も良くて幸福な奴はなかなか見たことがない。少なくとも私がツネ様の人生を引き受けたら半日で音を上げるはずだ。たぶん宮本恒靖という生き方は、簡単じゃない。
だから二度目の監督話も出たらしいけど、今はとりあえず休んで欲しいかな。プロチームの監督が背負うものは例外なく重たい。3年も背負ってくれたんだから、感謝と労いが筋だと思う。ありったけのありがとうを込めたとて、彼の3年間には足りないぐらいだ。

ありがとう、そしてお疲れ様、宮本恒靖。

……また、いつか。

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