月館つむぐ

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【一次創作】一夜の救出作戦【#ガーデン・ドール】

一週間とちょっと。 ボクは、ずっと引きこもっている放送委員の後輩……熊田の部屋へ、毎晩手紙を差し込んでいた。 グリーン特有の録音魔法を使った、声の手紙を。 今日も、録音をした手紙を持って行くつもりだったんだ。 魔法を発動しようとして、思い直す。 このままじゃだめだ。 その日は、何も持たずに3階へと向かった。 コンコン。 軽くノックをしてみる。 これだけなら、いつも手紙を差し込む前と一緒だ。 違うのは―― 「熊田ちゃん、いるかい?」 ――直接、そのまま話しかけた

    • 【一次創作】きみの瞳に映したい景色は【#ガーデン・ドール】

      ※Attention※ こちらは、下記動画作品の文章verとなっております。 内容はほとんど変わりありません。 お好みの方でお楽しみください。 ボクは、ひとり静かに、寮の3階を尋ねる。 とある部屋の扉の下から、白い紙をそっと差し込む。 そして、その場を立ち去る。 白い紙には録音魔法を込めて。 【4/13 夜】 やあ、久しぶり。シャロンだ。 えっと……熊田ちゃん、元気かい? 久しぶりにお話しできたら、いいな。 【4/14 夜】 熊田ちゃん ちょっと心配させる通知があった

      • 【一次創作】漆。教育実習生の試用期間【#ガーデン・ドール】

        嗚呼。なんということだろう。 自分はそれに、焦がれていた。 幻の中の、きみは今――――。 “あるふぁべっと”について尋ね終わった後。 其のドールは他のことが気になった。 “これらは一体、どこまでタダで教えてくれるのだ?” と。 「あ、すみません最後に。これが最後です。今日は」 とはいえ、何を訊いたものか。 教えてくれそうでもあり、教えてくれなさそうなこと。 ふと、其のドールは隣にいる存在を指さす。 「コレ、試用期間延びませんかァ?」 「……え?」 隣にい

        • 【一次創作】陸。読めない記号。【#ガーデン・ドール】

          いつ消えた? 何故消えた? どうして消えた? それが、夢の正体か? それとも――――。 どうしても、読めない箇所がある。 其のドール……ジオは、とある本と睨めっこを続けていた。 歩みの本。 最初にツインテールの賑やかな同期ことカガリが押し付けてきたときは何事かと思ったが、ガーデンに関する歴史が書かれたそれはとても興味深いものだった。 やがて、其のドール宛に直接、同じ本が届いたが未だカガリへの返却はしていない。 したところで、彼女が有効活用するとも思えないのだが。 …

        【一次創作】一夜の救出作戦【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】いつかの記憶。失った記憶。【#ガーデン・ドール】

          B.M.1424 4月 …… ボクは、いつも通り、目を覚ます。 いつも通り? 昨日の記憶といえば、ヒマノくんにとある約束をして、寝る直前にジオくんに取引とやらをもちかけられて。 それから……微妙に、布団に入った記憶がない。 ジオくんと話をしたとき、あのとき時計を見ると、確か日付が変わるギリギリだったはずだ。 つまり…… ボクは端末を確認する。 表示されている日付を。 B.M.1424 4月8日 昨日だと錯覚している日付は、6日だ。 「そう、か……なるほど、こうい

          【一次創作】いつかの記憶。失った記憶。【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】遠い記憶-槍機【#ガーデン・ドール】

          換気のために窓を開け放つとともに入ってきた風に煽られてカタン、ととあるものが音を立てる。 「あ……そうだ、これ……」 ある日、いきなり届いた長物。 マギアビーストが出現した際に貸し出される剣によく似た先端に、柄の部分だけをさらにいくつか繋ぎ合わせて長くした……ように見えるもの。 【戦闘用試作管状柄刀剣】 そう書かれたメモとともに玄関前に佇んでいた。 ……正確には、ポスト箱の上に。 普段は10分の1サイズになるよう縮小魔法をかけている。 それがそのまま、窓の近くにある

          【一次創作】遠い記憶-槍機【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】伍。取引。【ガーデン・ドール】

          自分は、確かに。 確かに、それのことが――――。 其のドールは、たまたまその場所に立ち入った。 ただ、それだけだった。 シャロン、と呼ばれるドールが寝ていて、起こさずに珈琲でも飲もうと。 それだけのつもりであった。 開かれたその手帳を見るまでは。 「……へえ」 その手帳に手を伸ばす。 こんなところに開いたまま寝ている方が悪いのだ。 手帳を持ったままソファに座り、中身を見る。 12/10に手帳は購入したこと 七不思議、秋祭り、神話の本、欠けたもの、ガーデンの歩み、

          【一次創作】伍。取引。【ガーデン・ドール】

          【一次創作】クロスする思惑【ガーデン・ドール】

          B.M.1424 4月6日 夜 LDKに誰もいない、夜のこと。 【シャロン】という存在として一番古い記憶の時からいる、幼い友人からとあることを申し出られた日の夜のこと。 LDKで何か飲みながらここ最近のことを手帳にまとめておこうと、そう思っていただけだった。 こんな時間にそうそう起きてくるドールもいないだろうと。 その油断が、あんなことになるとは思いもしなかったんだ。 「…………あ、れ……」 いつの間にか寝てしまっていたらしい。 眠くなりにくい珈琲ではなく、ココア

          【一次創作】クロスする思惑【ガーデン・ドール】

          【一次創作】くじけないココロと共に【#ガーデン・ドール】

          その日の前日。 明らかに、いつもの彼とはどこか違ったんだ。 なぜ、今きみがそこにいるんだ。 なぜ、今きみはそこで笑っているんだ。 なぜ、今きみは。 そこで、溶けているんだ。 「あ、れは……なんで。なんで■■がッ……なんで、それを彼が……ッ」 体を動かせない中、その一言だけが、絞り出すように喉からあふれた。 それ以降は、強く唇を噛み締めて、無意識のうちに強く拳を握る。 ボクは、あの反応を知っている。 遠くてちゃんとは見えなくても、アレが何であるかを知っている。 ク

          【一次創作】くじけないココロと共に【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】肆。教育実習生との心移実験。【#ガーデン・ドール】

          きらきらと。 一層輝くそれを。 自分には眩しいそれを。 簡単に視ることができなくなったのはいつからだ? ガーデン。あっち側。情報。板切れ。人型。知っている。知らない。被害者。 寮の共有スペースから興味深い会話が聴こえてくる。 このまま中へと入ってしまったら途切れてしまうような気がして、入口で聴き耳を立てた。 B.M.1424 3月29日 午前。 この日の前日。 教育実習生と釣りに興じたその日の夕方。 その際に話した時もどこか異様な空気を感じたドール、シキ。 そんな

          【一次創作】肆。教育実習生との心移実験。【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】破壊の痕、円い月【#ガーデン・ドール】

          B.M.1424 3月25日 知ったところで、伝えられない。 ならば、知識を追い求め続ける意味はあるのだろうか。 いや、必ず。 必ず意味はあるはずなんだ。 そう自分自身に言い聞かせ、新たに届いた情報に目を通す。 【太陽の種の研究結果】について。 「……ははっ、だからあの時……」 その内容に、思わず自嘲し言葉が漏れる。 ボクが生み出した単眼の小動物――今日はアイアイという小型猿だ――は、じっとその様子を見てくる。 こいつには自我はないので、ただの命令待ちであるのは分

          【一次創作】破壊の痕、円い月【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】参。教育実習生と釣りに興じる【#ガーデン・ドール】

          貴方は。 光の中の。 闇の中の。 白の中の。 黒の中の。 灰の中の。 そこにいる貴方は。 誰だ――――。 何やら多くのドールの感情へ爪痕を残した事件から数日後。 其のドール、ジオはいつもと変わらない調子で日常を過ごしていた。 否。寧ろいつもより機嫌が好いとまで言えるだろうか。 その日、其のドールはとある申請を行った。 【釣り具を貸していただけます?  できればセットで……2セット分。海で釣るのでそれに適したものだとなおよしです。】 その申請はすぐに承諾され、翌朝には自

          【一次創作】参。教育実習生と釣りに興じる【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】至知なるモノへ尋ねる【#ガーデン・ドール】

          "ククツミさん"に手をかけた翌日。 "ククツミちゃん"が生まれたその日。 慌ただしい変化の片隅で、一つの通知が届いていた。 [シャロンさんとククツミさんにウインターチケット1枚追加されます。] B.M.1424 3月13日 新たなククツミのことを気にかけながらも、少しずつ考えを整理する時間を作れるようになった頃。 偽神魔機構が現れるより、少し前。 ……考えを整理することができるようになったのは、転機となったあの出来事を聞いてくれたドールがいたのも大きいだろう。 まさ

          【一次創作】至知なるモノへ尋ねる【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】ロックされた情報【#ガーデン・ドール】

          3月18日 ガーデンのグラウンドに、偽神魔機構獣が現れた翌日。 ボクは、魔機構獣対策本部で朝を迎えた。 昨日泊めてほしい、と本部さんへお願いし、許可を得たからだ。 一緒に宿泊した仮面のドール……ロベルトは心身ともに疲れていたのだろう。 早朝とはいえ、ボクが起きたときにはまだ眠っていた。 そんなロベルトを起こさないようにしつつ、とある力を手に入れてから毎朝のルーチンワークとなった動作を行う。 それは、手のひらを上に向けて念じ、"単眼の小動物"を生み出すこと。 昨日はたま

          【一次創作】ロックされた情報【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】弐。観察開始。【#ガーデン・ドール】

          欠陥。 欠点。 欠如。 欠格。 欠損。 欠乏。 微細な違いこそ在れ、何れも「足りない」ことを意味する。 足りない。 決定的に、足りない。 それが何かは、まだ―――― 此処で生活をすることになって早数日。 時折共有スペースへ降り人形達の往来を観察した。 何やらこそこそと食料だけ持ち出す者。 眠たげに食事や水分補給だけを行う者。 せっせと他社の為の食事を用意する者。 他者との交流の為、会話を弾ませる者。 自分と同じく周りを俯瞰して視ている者。 この場所には感情が渦巻いて

          【一次創作】弐。観察開始。【#ガーデン・ドール】

          【一次創作】5度目の討伐を振り返る【#ガーデン・ドール】

          「これで良しっと……」 2月中旬。 ボクにとっての『起点』となった日より少し前。 ガーデンの図書室に現れたマギアビーストがいた。 方双魔機構獣 オックトライ。 討伐されてから届いていた恒例のステッカーを自身の手帳に貼るのをすっかり忘れていたのだ。 これまでの出来事を、考察を、疑問を、書き留めておくための手帳。 普通のノートよりも丈夫な革のカバー付きだ。 討伐に参加すると必ずもらえるらしい、マギアビーストを模したステッカーを必ずここへ貼って、どんなマギアビーストであった

          【一次創作】5度目の討伐を振り返る【#ガーデン・ドール】