見出し画像

原辰徳とグアルディオラを比較してみた話

初めに

僕はサッカーも好きなんですけど、野球も好きなんですよね。なんなら野球の方が見始めたのは早かったくらいです。両親や周りの影響で巨人ファンになったので巨人のことや原監督のことは人並みには知ってるわけです。なので今回は野球界の名将とサッカー界の名将を比較した記事をお届けしたいと思います。

異常な程のアップデート力

監督歴も監督としてチームを優勝させた回数も多い原監督監督とグアルディオラ監督ですが、最大の共通点は異常な程のアップデート力だと思います。

原監督は監督キャリアの多くで2番には所謂古典的な2番タイプのバッターを置いてきました。木村拓也、松本哲也、藤村大介、寺内崇幸、片岡治大等です。もちろん彼らのような選手を2番に置くことにもメリットはありますし、実際長年に渡って多くのチームが採用してきた形と言えます。

しかしながら、2016年から3年間監督を務めた高橋由伸監督の下で1つの問題が発生しました。

坂本勇人、マギー分裂問題。

言葉だけ聞くと、坂本勇人という人とマギーという人が不仲になったのかと思いますがそうではありません。ちなみに坂本勇人という人は、あの田中将大と同じ少年野球チームに所属していて、10年以上巨人軍のショートを守る、チームの象徴であり、現キャプテンです。

マギーというのはモデルのマギーではなく、巨人に所属していた外国人選手です。

2018年、巨人は1番に坂本、2番に若手選手(重信、山本、田中俊太)3番にマギーというオーダーを組みました。ちなみにその年の彼らの打率は坂本が.345、重信.281、山本.255、田中俊太.241、マギー.285でした。(ちなみに重信、山本、田中の合計本塁打数が4本です)

坂本とマギーの前にこの若手選手が入るとどうなるか? 


打線が線ではなくなってしまうことが多々ありました。

例えばツーアウト2塁で坂本を迎えたとします。巨人としてはチャンスで最高のバッターに回ってきたわけです。ですが、一塁が空いてる状況、坂本と2番打者を比較した際の力量を考えて相手は坂本との勝負を避けるわけです。

サッカーでいえば、メッシにゴールを決めてもらうためにラストパスを出す展開までいったのに直前で審判が笛を吹いてシュートすら打たせてもらえないようなもんです。

他にもツーアウトランナー無しで1番の坂本に回ったとします。(8番には打撃の得意でない野手、9番には投手が入るのでツーアウトランナー無しの状況は起きやすいと言えます)

仮に坂本がヒットで出塁したとしても、2番の選手が凡退してしまっては得点は入らず、スリーアウトチェンジです。

サッカーでいえば、メッシがドリブルで相手を交わしてチャンスを作ってラストパスを出しても、パスをもらった選手があっさり宇宙開発のシュートを打つようなもんです。

状況としては上記のようなことが起きて、チームの顔であり、相手から最も警戒されるバッターである坂本を最大限活かしているとは言えなかったわけです。

そんなこともあり、3年間優勝出来なかった巨人軍に原辰徳監督が戻ってくるわけです。このカムバック感はジダン感がありますが、ジダン程歓迎ムードではなかったような記憶をしています。

原監督の監督キャリアからすれば、高橋由伸監督と同じように2番には田中俊太や重信といった選手を起用したと思います。

しかしながら、原監督は3度目の監督就任となった際、かなり早い段階で「2番に強打者を置きたい」「2番丸というのも面白いと思ってる」といった趣旨の発言を度々されていました。

結果的に多くの試合で2番を務めたのは坂本でしたが、亀井(.284/13本塁打)、坂本(.312/40本塁打)、丸(.292/27本塁打)、岡本(.265/31本塁打)の4人を上位に並べることで得点力アップに成功しました。(実際シーズンの総得点数、初回の得点数いずれもリーグトップ)

坂本のすぐ後ろに坂本と同じくらいの力量の選手を置くことで、チャンス時に坂本が敬遠されることも減り、ツーアウトから坂本が出塁しても直後の打者が簡単に捻られてスリーアウトチェンジといったことも減りました。

もちろん以前から優秀な監督であることは理解していましたが、チームを離れていた間にここまでチームの問題点を把握し、はっかりと解決策まで提示したことには頭が下がりました。

ペップのことに関してはもっと長くなりそうですが、バルセロナ だけでなく、バイエルン、マンチェスターシティでも自身の哲学に合ったサッカーをし、毎年のように画期的な戦術を披露している点で異常なアップデート力という言葉に間違いはないでしょう。

選手の長所と作戦の融合

野球もサッカーもただ作戦を立てれば良いというわけではありません。

ハーフスペースを取ることも目的にしていても、スペースで受けてそこからチャンスメイクをするのが苦手な人にそのタスクを与えても効果は薄いでしょう。

メッシの偽9番があれだけ相手を苦しめたのもメッシの長所を活かしてこそです。誰でもいいから偽9番のタスクを与えればいいというものでもありません。

野球でも同様のことが言えると思いますが、原監督の素晴らしい采配が見えた、昨年の8月24日の横浜戦について紹介したいと思います。

6対6で迎えた11回の裏、巨人は9番の重信、リリーフで登板して1番に入っていた投手の田口、2番の坂本、3番丸と続いていく打順です。

対する横浜の投手は左腕のエスコバー 投手でした。(150キロを超える真っ直ぐを武器に74試合に登板)

巨人はまず9番の重信がヒットで出塁しました。

普段野球を見ない人に説明すると、攻撃側は重信をホームに返したい、そのためにまずできるだけ早く、浅いアウトカウントでランナー2塁の状況を作りたいと思ったはずです。

なぜならランナー2塁の状況を作れば、相手の外野手はランナーのホームへの生還を防ぐために前に出てきます。そうするとその分、ヒットゾーンが広がるという効果があります。(サッカーでいう、スペースができるといった表現でしょうか)

俊足のランナー重信を一塁に置いて、次は投手の田口の打順です。

巨人ベンチはまず、投手の田口をそのまま打席に立たせました。投手の田口が打席に入ったことで横浜バッテリーとしては送りバントの選択肢が頭の大部分を占めたはずです。

田口をそのまま打席に送り、バントをさせればランナーを得点圏に送ることができ、かつ次の回も田口を投手として使えるのが敢えて代打を出さず田口をそのまま打席に立たせることのメリットと言えます。

しかし、この考えを上回る原辰徳采配が披露されました。


実は田口の構えはフェイク、一塁ランナーの重信が盗塁、盗塁の意識が薄くなっていた捕手の送球はベースから外れたところにいきました。

この時点でかなり凄い采配ですが、原監督の神采配はまだ続きます。

盗塁成功でランナー2塁、しかもボール2となったところで原監督は石川を代打に送ります。先に結果から言えば、石川がサヨナラホームランを打つわけですが、この裏に原監督の言葉によるアシストと状況によるアシストがありました。

① 言葉によるアシスト

DAZNのドキュメンタリーの中で、石川は送りバントなのかヒッティングなのか、どっちだろうという気持ちだったと話しています。そこで原監督は石川の迷いを取った状態で打席に送り出すために、「迷う必要はないよ、自分の打撃をしてくれ」と声をかけたことを明かしています。

② 状況によるアシスト

単純な力量で比べると投手エスコバー と打者石川ならエスコバー に分があります。しかしながら結果的には石川が打ったというのは、ランナー2塁という状況で送り出せたことも大きかったと思います。ランナー2塁ならば当然外野は前に来ますからヒットゾーンは広くなります。更にもし、ノーアウト一塁の場面での代打だと、ゲッツーのリスクもあるため、単純な力量で劣る石川にとっては更に難しい場面になってしまいます。

更に次の打者が坂本丸であったことも大きいと思います。仮に石川が凡退してもワンアウトで坂本丸ですからまだまだサヨナラの可能性はありますし、石川にとっても彼らが後ろに控えていることは大きかったのではないでしょうか。

原監督もエスコバー と石川、どちらが力が上かは理解していたはずです。でもだからこそその壁を打ち破るために、相手をリスペクトした上でのこのような絶妙なアシストがあったのだと思います。


時に選手のプライベートまで制限

この点も2人は似ていると言えます。

原監督は過去に選手に禁煙をするように促したり、SNS禁止令を発動したりしてました。(上原選手などはその後もSNSを普通にやっていたので強制ではないと思います)


グアルディオラ監督も過去にSNSを控えるように命じたり、クラブのロッカールームのWI-FIを制限したりしています。


時代の流れに合っているかどうかは微妙なところですが、それだけ選手にコンディション管理を求めていることだと思います。

圧倒的スピーチ力

これも優秀な監督には必須の要素なのではないでしょうか。

長いシーズンを戦う上で、時にチームの団結力を上げ、時に緩んだチームを締めることが求められます。

グアルディオラ監督のスピーチ力に関しては、マンチェスターシティのドキュメントで見ることができます。大事な試合の前に選手を鼓舞することはもちろん、消化試合でも選手のモチベーションが下がらないようにチームとして達成できる、塗り替えられる記録を提示してモチベーションをアップさせるなどがありました。

原監督のスピーチ力に関しては、去年のシーズン開幕戦前のスピーチ、日本シリーズ開幕戦前のスピーチを貼っておきます。


内容も入れてしっかり喋ることもあれば、優勝決定試合の前は「何も言うことはありません、さあ行こう」とたった一言で選手を送り出しているんですね。

この辺の使い分けをできるあたりも素晴らしいと思います。

またユーモアのセンスも凄いなと思いました。去年、巨人は日本シリーズに進出するも0勝4敗でソフトバンクに敗れました。

その事に関して原監督はテレビ番組等では「日本シリーズのことは忘れました、記憶がありません」とユーモアを交えて言っています。

しかしながら今年のキャンプスタート前の全体ミーティングでは、「我々はリーグ優勝はしたが、日本シリーズは惨敗した」と話していました。

この辺のTPOに合わせて使い分けてるところも熱いなと思います。

ペップもピッチ上やロッカールームではもの凄い熱意を持って選手を鼓舞しますが、時にユーモアを交えてインタビューに答えています。


これに関してはインタビューの動画を見ていただく方がわかりやすいかもしれません笑

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は野球界とサッカー界と名将の共通点を探してみました。

アンチ的な人がよくおっしゃるのは「ペップは補強が自由にできるクラブだから勝てる」「巨人は補強ばっかだから勝てる」といったことです。

もちろん彼ら2人が資金力のあるチームを指揮してきたことは確かですが、試合前にメンバー表に名前だけ書いてあとは寝てるだけでも勝てるほど甘くはありません。

マンチェスターシティで左サイドバックとして多くの試合に出たのは70億で獲得したメンディーよりジンチェンコやデルフでした。

2019シーズンの開幕前、巨人のセットアッパー候補に名前が挙がっていたのはシーズン中にトレードに出されてしまう吉川光夫でした。そんな苦しい台所事情を整備したことで優勝につながりました。

「お金があるんだから優勝して当たり前」そんな言葉で片付けていたら彼らの本当の凄さを見落としてしまうのではないでしょうか。










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?