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秋種冬咲(しゅうしゅとうしょう)

もちろん こんな四文字熟語は この心の辞典にしか掲載されていない。


まぁ なんかあってもいいような気もするけど。


それはさておき。


最近は もっぱら 警備の仕事ばっかりしている。


というのも 1つの現場を任せられるような状況になりつつある。


自己申告した訳でもない。


おそらく 自分に任せておけばいいという会社の考えだろうとは思うんだけど。


実は その現場には 違う工事の際に行ったことがあって。


それが 去年の秋頃かな。


その時に 工事をしている道路に面したおウチから 可愛い子供が 顔を覗かせて ジッと工事を見ていた。


工事現場での警備員の仕事は 近隣住民さん並びに通行する方々のフォローと業者さんの作業中に事故が起こらないように 辺りを警戒すること。


いかに出来る限り 工事をしていない通常の状態を保つか。


すると そのお子さんとお母さんが 話し掛けてきた。


内容は 御迷惑をおかけしていることを伝えて お子さんが秋の遠足に行ってきたことを教えてくれたことくらいだった。


その日 作業が終わって帰り支度をしていると 初めは女の子だと思っていた 可愛らしい男の子が こちらに近づいてきた。


「どんぐり あげる。」


手のひらに乗せられたどんぐり。


「もらっていいの?」


笑顔で頷いた。


「ありがとう。」


そんなことがあった場所だったから 先日 訪れた際に その思い出がフラッシュバックしてしまって。


(あの子 元気にしてるかなぁ…)


なんて 思いながら 警備をしていた。


工事も中盤戦に入り お昼ご飯を食べて 戻ってくると よくコミュニケーションを取ってくださる きさくな監督さんが 誰かと喋っているのが 聞こえてきた。


他の隊員の方がお昼ご飯に行くので 交代しにいったところ たまたま 喋っていたのが 男の子とお母さんだった。


「秋頃に どんぐりをもらった警備員です。」


そこからは お子さんが 今年の4月から 幼稚園に通われること。


しかも その幼稚園は お母さんも通っていた思い入れの深い幼稚園らしく 現在 お母さんが通っていた折りに担当してくれていた先生が 統括をなさっているとのことで 入園を決めたと教えてくれた。


話の流れで 年齢の話になった。


「自分 32歳なんですけど ヤンチャですけど やっぱり可愛いですね。」


なんて話してたら。


「え…私も32なんですけど。」


あたすの誕生日は6月なんだけど お母さんは3月とのことで 年齢差が3ヶ月だということまで 判明してしまった。


最後に写真を撮りたいと言われたので 警備員の恰好だと何かとめんどくさいので 上着を羽織って お子さんとピースサインをして 納まりましたとさ。


心が温かくなる。


あの子は 覚えているのかな。


こっちが忘れることは無さそうだけど。


大きくなっていく彼の未来を想いながら 電車に乗り込んだよね。


秋に無意識で撒かれた種は この短期間に育って芽吹いた。


冬に咲く珍しい花。


好きだなぁ。


1つのドングリが繋いだ縁。


大切にしたいな。


また会えてよかった。


また会えたらいいな。

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