明確な悪意というやつを思い出した。

最近、オードリー若林さんの【表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬】を読み始めた。キオスクで買って点天と一緒の袋に入れたから若干餃子臭がする。
まだ全然、全体の4分の1くらいだけどもう痛い。色んなところが痛い。【勝手にふるえてろ】を観たあの時と同じような感情。

ところで、学生時代の話、
学習塾が一緒だった子の話を読んでいて思い出したことがあるので、久々にnoteを書いている次第です。


「明確な悪意」というものを受け取ったことはありますか?
八百万の神が首を縦に振るほどに
確実に自分に向けられた、
鋭い目付きで突き刺してくるソレを、
受け取った経験はありますか?

私がソレを受け取ったのは小学6年の秋だった。
私は受験生であった。中学受験というやつだ。
同級生で何人か受験する子がいたが、そのほとんどが同じ学習塾に通っていた。
この学習塾というのがなかなかメンタルに来る制度を採っていて、
ほとんど毎月ある定期テストの成績により4つのクラスに分けられ、尚且つクラス内の席順も成績順に座らせられるものであった。
成績が上がればクラスが上がったり座る席が前の方になったりした。無論、下がればクラスは下がり、席は後ろになった。

私は5年生からその塾に通っていたが、ほとんど上から3番目のクラスに定住し、まれに2番目のクラスに昇格するくらいで、甘く自分を評価しても決して“出来の良い生徒”ではなかった。
で、同級生はどうだったかと言うと、やっぱり大体同じ位置にいて、2番目と3番目を行ったり来たりしている子がほとんどだった。

そんな中で1人だけ、1番目のクラスに定住している子がいた。私が入塾する前からいたので以前のことは分からないが、彼女がクラスを降格したことは一度も見たことがなかった。彼女を仮にAとして話を進める。何を隠そう、「明確な悪意」を差し出してきたのはそのAであった。

6年の春が終わる頃、私は定期テストでなかなかに酷い点数を叩き出した。その少し前から兆候は現れていたのだが、ついにここまで来るかと思うほどの酷い点数であった。
成績が返された後、算数の担当者に呼び出され、それはそれは手厚い激励を受けた。
『まだ全然、ここから巻き返せるよ!』だとか、『◯◯(私の名前)の本気見せれる?』だとか、そんな感じの言葉。
正直全然危機感を覚えていなかったのだが、先生があまりに励ましてきたので、
(あ、これ今結構やばい状態なんだ。)
と気付き、なぜか号泣した。

しかしまあ、その後の自分はとにかく凄かった。まだ20年とちょっとしか生きてないけど、人生で1番頑張った期間だった。
とにかく勉強した。それまでサボっていた予習・宿題・復習をきっちり毎回やった。
ちょうど学校が夏休みに入ったこともあり、時間はたっぷりとれた。
その結果、笑ってしまうほど見事に成績は上がった。
夏の終わりに受けたテストの結果、
私の居場所は2番目のクラスの1列目になった。

その後も順調に勉強を続けた。
9月末のテストは志望校別のものであった。
とは言っても、地域の中で1番レベルの高い中学を目指す人用と、それ以外の学校を目指す人用とで分けられていただけで、
私はそれ以外の学校の方を受験した。
勉強の成果もあってなかなか好成績であった。
クラス替えが発表され、私は1番目のクラスに入ることになった。

正直自分でもナゼ?と思った。
1番目のクラスには私と同じ方のテストを受けた人はほとんどいない。
なのになぜか、そこに配置された。
クラスに入り座席を確認すると、Aの名前の一つ前に私の名前が書かれていた。
私はAの前の席で1ヶ月を過ごすことになった。

その日Aは授業開始ギリギリに教室に入ってきた。座席表を見てすぐに私の後ろに座った。挨拶も何もなく、チラッとこちらを見ることすらなく座った。正直、何も言われないならむしろその方が良いと思った。Aには、どこかしら恐さを感じていた。

授業が終わり、後ろから前にプリントを集める時、私はAを振り返った。
Aはプリントを渡しがてら『ねえねえ』と話しかけてきた。プリントを前に送りながら再びAに顔を向けた。目の奥が死んでいた。
『◯◯ってさぁ、どっちのテスト受けたの?』
普通の学校のやつだよ、と答えた。
『そうなんだ〜』と言い、Aは机の上を片付けだした。
正直とても怖かったが、この会話だけで終わるのであれば問題ないと思った。

しかし、それは終わらなかった。
翌日教室に行くと、前日と違ってAは既に席に座っていた。
軽く挨拶をして自分の席に座ると、Aが隣の子と話しだした。
『そもそもさぁ〜同じテストじゃないのに席混ぜるとか意味分かんないんだよね〜』
………
うわぁ…言ってるやん…
バリバリ言ってるやん…

翌日。Aの隣の子がAちゃん何やってるの?と聞く。(どうやら消しゴムをハサミでズタズタにしてたらしい。)
『今ね〜呪ってるの。何にとは言わないけど。』
………
え?まさかね?

翌日。私は成績優秀者で表彰された。クラス内で賞状を受け取り、席に戻ろうと振り返ると、酷く恐ろしい顔でAがこちらを見ていた。
………

次の定期テストで私は2番目のクラスになった。Aは相変わらず1番目をキープしていた。非常に安心した。結局、Aは第一志望には受からなかった。ちなみに私は受かった(イェイ)
卒業して以来一切会っていないし今後も会うことはないが、どうしても彼女のことは忘れられない。

あれほどまでに「明確な悪意」を受け取ったのは初めてであった。Aが何に対して負の感情を抱いたかは分からない。違うテストを受けた人間が前の席に座ることが問題なのか、それとも私が同じクラスに入ってきたこと自体が問題なのか、私はAではないから何も分からない。ただ一つ、Aが私に悪意を向けていたことは、手に取るように分かった。


大人になるにつれて、だんだんと自分の感情を隠すことを知っていく。
それが良いことなのか悪いことなのか、人それぞれ感じ方があるだろうが、
包み隠さず剥き出しにされたあの悪意は、やはり気持ちのよいものではなかった。
だから未だに思い出すし、一生忘れることはない。

『自分の気持ちに正直に』『ありのままのあなたでいい』『全てをさらけ出して』
なんて言葉が巷に溢れているけれど、
どれも必ず注釈のいる言葉だなぁと思う。
下手すれば、悪意までも肯定しかねない。

正直にありのままにさらけ出された悪意は、
とても恐ろしく、とても冷たい。

そんなことを思い出した。
まじで本の内容とは関係ないが、なんとなく思い出したので。
あと4分の3、色んな感情引っ張り出して読みたいと思います。で、読み終わったら、今度こそちゃんと感想書きます。

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