見出し画像

『バウルを探して〈完全版〉』を読んで

『バウルを探して 〈完全版〉』(川内有緒文、中川彰写真、三輪舎、2020)が出るという情報を、著者の川内有緒さんのTwitterで知り、絶対に手に入れなければと思っていた。
この本はずっと手元に残して置く、手にする前から決めていた。

『バウルを探して』は文庫版で初めて読んだ。(文庫版は幻冬舎『バウルの歌を探しに』)
Twitterのフォロワーさんからおすすめされたのがきっかけだ。詩が好きなら読んでみてとそんな感じだった気がする。そんな風に何気なく手に取ったのだが、読みながら号泣していた。
旅の本としても面白いのだが、バウルの存在、歌の意味、旅の終わりに見えてきたもの…本から伝わる熱量に胸を打たれた。泣いてしまう理由も実際はよくわからないのだが、とにかく大好きな1冊となった。
(紹介してくれたフォロワーさんには感謝しかないです。本当にありがとうございます!)

さて、この完全版。
完全版あとがきと解説を追加した以外は、もともとの文章は変えていないらしいのだが、新鮮な気持ちで読めた。それはやっぱり写真の力が大きいように思う。
著者と共に旅をした故・中川彰さんの写真をカラーで載せている。バングラデシュの雰囲気が伝わってくる味わい深い写真たち。見開きで見るその土地の人たち、風景が川内さんの文章を補完して、中川さんの写真がなければ、やはり完全ではなかったのだなと感じた。

そして装丁も美しい。コデックス装というもので、180度開くようになっていてこだわりがすごい。たまに現れる綴じ糸、背表紙、質感。ぜひここにも注目してほしい。

不思議なのだが、中川さんの写真とこの装丁が今までの『バウルを探して』と全然違うものを読んだ気持ちにさせてくれる。
もちろん、完全版を読みながらまた泣いた。

何回読んでも心を揺さぶられる。
そういう本にはなかなか出会えない。私はこの『バウルを探して』をこれからも大切にしていきたいと思う。

特設サイト https://3rinsha.co.jp/baul/?s=09