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お客様に寄り添う、本物の会社

 先日、弊社のセミナー「実践学習会」で香川県の徳武産業様を訪問しました。徳武産業さんはDOIT!シリーズで取材した会社ですが、この10月に、「日本サービス大賞 経済産業大臣賞」を受賞され、また注目を集めています。 
 徳武産業さんは、介護シューズ「あゆみ」など、高齢者に特化した靴を製造販売する会社ですが、27年前まではスリッパやルームシューズなどをOEMで作っていた会社です。当時社長だった十河孝男さんがある時、知り合いの特別養護老人ホームの施設長から「お年寄りがスリッパを踏んで転倒する事故が相次いでいる、何とかならないだろうか」と相談を受けたことが、靴づくりへ転換したキッカケでした。

 高齢者の足を調べてみると、腫れ、むくみ、方マヒなど問題がたくさんあり、既存の技術では対応できないことがわかりました。しかし、困っているお年寄りの気持ちを知った十河さん(当時社長)は、一念発起しゼロから靴づくりを学び、数年間かけて高齢者が転倒しない靴を開発しました。

 その「あゆみ」という商品はヒットして売れるのですが、高齢者の足の問題はまだまだありました。左右の足の長さが違う、左右で大きさが違う。そんな悩みにも応えたくなり、業界常識を超えて「片足販売」を始め、靴底の高さを左右で変える「パーツオーダー」など、とことん悩みに応えられました。幅、高さの調整。こうした個別対応は赤字部門なのだそうですが、「靴が合わない」ことで生きる勇気までなくしてしまっている人を見ると、どうしても辞めることができないと続けておられます。今では介護シューズ全国シェアの55%(数量ベース)を徳武産業が占めるまで成長。高齢者にとって手離せない、いえ、足離せない会社になっているのです。

 「お客様の満足」「お客様の喜び」などと、私たちはよく言葉にしますが、徳武産業さんのお客様への寄り添い方を見ていると、私たちはお客様に寄り添っている「つもり」なのかもしれないと反省します。たった一人でも、その人が本当に困っておられるなら、何とかしてあげたいと動き出す。その気持ちが徳武産業さんの出発点。その気持ちが伝わるからこそ、顧客から期待され、商売が成功しているのだと思います。毎日何十通も感謝の手紙が届くというのは、お客様への思いが本物だからだと思います。

 今は、ネットを通して何でも明らかになる時代。お客様に寄り添っている「ふり」や、「つもり」の会社では、きっとうまくいかなくなってしまうのでしょう。お客様から「あなたがいなくてはダメだ」と言われるくらいの会社を目指していきたいものです。


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