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1.服部良一「胸の振り子」/上下に揺れる音の振り子

2019年6月に先行発売されたGUIROの5曲入りミニアルバムを聴いたところ、「東天紅」という曲がとても気に入った。

一筋縄であらわせない不思議な進行の曲だが「カラビナに繋がれた鍵」という歌い出しは、上にむかって飛ぶようなメロディを持っており、1940年代、服部良一作曲の「蘇州夜曲」や「胸の振子」を思い起こさせるものだった。

そこであらためて「胸の振子」を聴いてみると、メロディの上下動が歌詞の意味と連動していることに気づいた。(歌詞はサトウハチロー)


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メロディが↗️↘︎↗️↘︎と上下する。


「柳に燕はあなたにわたし」

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柳をみて、さらに見上げると↗️燕がいる、という下から上への1オクターブ飛躍。上にいる燕は柳に向かって降りてくる。

それを「あなた」と「わたし」に例えながら相似形のメロディをくりかえす。「あなた」は下にいる柳で、「わたし」は上空にいる燕。

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地上と上空を行き来する上下運動がある。

2番の歌詞「煙草の煙ももつれる思い」も、地上から上昇する煙を自分の「思い」と照らし合わせている。

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現実の「わたし」は地上にいて、「あなた」を思う気持ちは上空の方にある。

「振子」というと横に揺れるイメージがあるが「胸の振子」はタテ方向だった。地上と上空、現実と空想のあいだを行ったり来たり揺れる。

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脚注:「柳に燕」は初夏のアイコンであり和柄の定番になっている/「花顔柳腰」は美人の形容/燕尾服は男性の礼服


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